繁殖に貢献か、それとも闇取引の温床か?中国の「トラ牧場」
このニュースをシェア
【3月3日 AFP】羽をばたつかせるニワトリを口にくわえ、うなり声を上げるトラ──これは、中国に数多く存在するトラの繁殖施設での来園者による餌付けの様子だ。しかし、自然保護活動家たちは、これら「娯楽」施設が、ますますトラを絶滅に追い込んでいるとして警告を発している。
中国東北部・黒竜江(Heilongjiang)省ハルビン(Harbin)にある東北虎林園 (Siberian Tiger Park)では、ニワトリのほか、ウシなどさまざまな動物を餌付け向けに用意しており、来園客はトラに餌として与えることができる。
ニワトリの骨をトラがかみ砕く音が響く中、来園者の一人は「なんてどう猛なの。あのトラは周りにほかのトラを寄せ付ようとしないわ」と話しながら、スマートフォンでこの光景を撮影していた。
だが自然保護活動家たちは、中国各地に存在するこうした「トラ牧場」と呼ばれるトラの繁殖施設が、死んだ後のトラを解体し、さまざまな部位を売却することで巨額の利益を手にしており、結果的にトラの絶滅を助長していると主張する。
国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature、IUCN)は、世界全体における野生のトラの個体数が、密猟や生息地の減少などから1世紀前の10万頭から現在は3000頭にまで激減しているとして、トラを絶滅危惧種と位置づけている。
一方、繁殖施設の関係者たちは、飼育下にある動物を取引することで、野生のトラへの圧力を緩和できると説明する。しかし自然保護活動家らは、この動きがトラやその部位を買うことへのためらいを軽減してしまい、結果的に新たな需要を生む可能性があると指摘する。
英ロンドン(London)の非政府組織(NGO)「環境捜査局(Environmental Investigation Agency、EIA)」のデビー・バンクス(Debbie Banks)氏はAFPの取材に対し、飼育トラの部位を販売することで「需要を刺激したり、密猟への圧力を持続させたりする」ことになると述べ、また「成体になるまでトラを飼育することは、野生のトラを密猟する以上のコストがかかる」と説明した。
野生のトラが生息する13か国中、トラ牧場が存在しないインドとネパールでは生息数が上昇しているが、商業目的でのトラの繁殖が合法的に認められているラオス、ベトナム、タイ、中国では状況が改善していないとバンクス氏は説明した。
他方、野生動物取引の監視団体「トラフィック(TRAFFIC)」のデータでは、2000年~2014年4月までの間に、少なくとも1590頭のトラが世界的に密猟されているとされ、これは1週間に2頭が殺されている計算になるという。
中国各地に約200か所存在する繁殖施設で飼育されているトラの個体数は約6000頭。世界の野生のトラの個体数の約2倍に当たる数字だ。