欧米出身の義勇兵、ISと戦うキリスト教系民兵組織へ
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【2月20日 AFP】米軍支給の戦闘服を身に着け、下唇にピアスをした若い米国人が、イラク北部アルコーシュ(Al-Qosh)で戦闘に参加している。
左腕の機関銃と右腕のイエス・キリスト──左右のタトゥーを見せながら、自分のことを冗談で「十字軍の兵士」だと言うブレットさん(仮名、28)は、2006~07年まで米軍兵士としてバグダッド(Baghdad)で従軍した。そして今度は、キリスト教系民兵組織「ドゥエイフ・ナウシャ(Dwekh Nawsha)」(アッシリア語で「自己犠牲」の意)の一員として、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」と戦うために再びイラクへやって来た。
イラクでは最近、キリスト教系民兵組織を支援するために外国人が流入するという新たな動きが生じている。ブレットさんはそうした外国人たちのリーダー格だ。
アルコーシュがISの手に落ちたことはない。だが、大半をキリスト教徒が占めるこの町の住民が、モスル(Mosul)やニネベ平野(Nineveh Plains)の住民数万人とともに近隣のクルド人自治区に避難するのも時間の問題だった。
14年半ばに始まった住民の大量流出は、世界最古の類とされるアルコーシュのキリスト教社会の存続を危機にさらしている。クルド自治区の治安部隊ペシュメルガ(Peshmerga)が、ISへの反撃とモスル周辺地域の奪還を試みる中、キリスト教徒の一部も自分たちの生き残りをかけて武器を取ろうとしている。ドゥエイフ・ナウシャはそうした組織の一つだ。
戦闘員の勧誘係としても活動しているブレットさんは、「外国人部隊」を作りたいと考えている。勧誘を始めて最初の1週間で、米国と英国、カナダ出身の志願兵5人を集めた。全員に軍隊または傭兵の経験がある。ドゥエイフ・ナウシャの外国人は、ISに合流した外国人に比べればごく少数だ。だが関心は高まっており、すでに新たに20人が入隊を希望する意思を示している。
■「平時に適応できず」再び紛争の地へ
ドゥエイフ・ナウシャに外国人が兵士として加わろうとする動機はさまざまだ。ブレットさんの勧誘に最初に応じたのは、米テキサス(Texas)州出身の温厚な人物、ルイス・パークさんだった。
パークさんは米海兵隊員としてアフガニスタンで従軍した後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、戦闘任務に加われなくなり、昨年12月に引退した。しかし「平時というものに、うまく(自分を)適応できなかった。だから、またこういうところへ戻ってきたかったんだ」と語る。イラクに来たのは祖国、米国を守るためだと言う。「俺は猛烈な愛国者なんだ。もしも、わが国の政府が彼らと戦わないのなら、俺が戦う」