【2月12日 AFP】北朝鮮は12日、新たに310個の政治スローガンを発表した。

 スローガンは、朝鮮労働党の発足と日本の植民地支配からの解放の70周年を記念して朝鮮労働党が起草したもので、北朝鮮の朝鮮中央通信(Korean Central News AgencyKCNA)が公表した。

 スローガンは攻撃的なものから、激励調のもの、安らぐもの、脅迫調のものまでさまざまで、スタイルもまた驚くほど詩的なものからひどく無骨なものまで幅広い。

 農業がテーマのスローガンでは、「果物をたわわに実らせ、その甘い香りで鉄嶺下のリンゴの海を満たそう!」というものがある一方で、「わが国をキノコの国に変えよう!」や「野菜は大々的に温室栽培しよう!」などというものもあった。

 スローガンの中で特に目立つほど多かったのは、金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席や金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の過去の2人の指導者をたたえるスローガンと、3代目の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記への忠誠を呼びかけるスローガンだった。

 ほかに軍事や経済、農業、科学技術、教育、芸術、スポーツをたたえるスローガンが並んだ。

■忠誠の証明

 14年前に北朝鮮から脱出し、現在は韓国に暮らすある脱北者(57)は「われわれはスローガンの雪崩に常に埋もれていた」と振り返る。

「われわれは忠誠心を示すためにたくさんのスローガンを覚えなければならなかった。だがスローガンは徐々に誰にとっても意味のないものになっていった。特に90年代の飢饉(ききん)以降は」

「あの温室のスローガンはもう何十年も前からある。問題は、ビニールハウスを建設するビニールや、温室を暖める燃料を、誰も持っていないことだ」とこの脱北者は付け加えた。

 脱北者の運営するウェブサイトでは、北朝鮮のごく普通の人々がこれらのスローガンを、現実を反映するジョークに作り変えている様子が報告されている。「この先の道が危険だとしても、笑いながら進もう!」という1998年のスローガンは、「進んで行く連中には笑わせておけ、だがなぜわれわれも同行を強制されるのだ?」と作り変えられたという。

 またスローガンからは、北朝鮮体制の思考や優先順位に対する洞察を得ることが可能で、いくつかの現実もみることができる。12日に公開されたスローガンの一つは、「人々の食料問題を解決し食生活を向上する」ために、食料の増産が緊急に必要なことを強調していた。(c)AFP