【2月10日 AFP】1型糖尿病の治療薬として試験段階にある「スマートインスリン」について、マウス実験で有効である可能性が示されたとする研究論文が、9日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。今後、最短で2年後の臨床試験開始を視野に入れているという。

 この薬剤は、米ユタ大学(University of Utah)の生化学者らが開発した「Ins-PBA-F」と呼ばれる製品で、論文によると、血糖値が上昇すると自動で作用するという。持続時間は14時間。

 研究チームが行った1型糖尿病のマウスを使った実験では、Ins-PBA-Fの1回投与で、「食事摂取量相当の糖分が与えられたマウスの血糖値を自動的に繰り返し下げる」可能性があることが示された。

 1型糖尿病の人は、血糖値を常に監視し、必要に応じてインスリン注射を打って血糖値をコントロールする必要がある。血糖値をうまくコントロールできないと、心臓疾患や失明などの合併症を引き起こすことがある他、死に至ることもある。

 Ins-PBA-Fは、自然に分泌されるホルモンを化学的に組み換えたもの。開発中の他の「スマートインスリン」のような、低血糖時にインスリンの分泌を抑制する、たんぱく質ベースのゲルやコーティング剤といった「バリア」を利用するものとは異なる。

 臨床試験については、安全性を確認するためのさらなる動物実験を経た後に実施されることになっている。2~5年後の開始を予定しているという。(c)AFP