【1月30日 AFP】米コロラド(Colorado)州の子ども12人に筋力低下やまひの症状が現れたのは、全米の子どもたちの間で感染が拡大している珍しいウイルス性呼吸器疾患、エンテロウイルスD68型(EV-D68)感染症に関連している可能性があるとする論文が29日、英医学誌ランセット(Lancet)電子版に発表された。

 コロラド小児病院(Children's Hospital Colorado)の医師らは、昨年8月~10月の3か月間に同病院に入院した小児12人の症例を検証した。発熱と呼吸困難を伴う症状を発症してから約1週間後、程度の差はあるものの12人全員に、四肢の筋力低下、顔面まひ、嚥下(えんげ)障害などがみられたという。

 8人はエンテロウイルスまたはライノウイルス(風邪ウイルス)に感染しており、このうち5人にEV-D68への感染が確認された。また、検査の結果10人に脊髄に、9人には脳幹にそれぞれ病変がみられた。

 四肢の筋力低下が確認された10人は、治療後も完全には回復しなかった。同様の筋力低下やまひの症状は、コロラド州以外にも全米で107人、フランスで1人が報告されているという。

 EV-D68は、ポリオウイルスと同じエンテロウイルス属のウイルス。エンテロウイルス属の中には、まれに髄膜炎や脳炎、まひ、心筋炎や心膜炎を引き起こすものがある。

 米国では昨年8月からEV-D68の感染が拡大しており、米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)によると今月15日までに1153人が中程度~重度の呼吸器疾患を発症した。ウイルスは感染者の排泄物や唾液、鼻汁に含まれ、密接な接触、くしゃみやせき、握手などによって第三者に感染する。ワクチンや特定の治療方法は確立されていない。(c)AFP