【1月29日 AFP】中東で発見された約5万5000年前の頭蓋骨の一部について、現生人類の祖先がアフリカの発祥地をいつ離れたかに関する手掛かりを与えるものとする研究論文が、28日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。この発見は、現生人類の祖先がネアンデルタール人(Neanderthals)と共存していたとする説の裏付けにもなるという。

 米ケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)などの国際研究チームが発表した論文によると、イスラエル北部ガリラヤ(Galilee)地方の西部にあるマノット(Manot)洞窟遺跡で発見されたこの頭蓋骨は、解剖学的現代人と呼ばれる初期の現生人類「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」の特徴を持っているという。

 マノット洞窟から北と北西に数十キロしか離れていないケバラ(Kebara)とアムッド(Amud)の2か所の洞窟遺跡では、これまでにネアンデルタール人の骨が発見されている。

 これらの古代人の骨は、5万年前から6万5000年前の時代のものだ。つまりこの2種の人類は、同時代に、おそらく地理的に近い場所に共存していた可能性がある。

 同大の古生物学者、ブルース・ラティマー(Bruce Latimer)氏は「現人類とネアンデルタール人が同じ時代に同じ場所にいたことは以前から推察されていたが、物的証拠がなかった。今回われわれはこの新たな化石で、まさしくそれを手に入れた」と述べた。

 人類系統樹における謎の分岐グループの一つであるネアンデルタール人は、その化石や骨角器が欧州、中東、中央アジアなどで発見されている。

 ネアンデルタール人が姿を消し始めるのは約3万年前。この不思議の最期は、ホモ・サピエンスによって絶滅に追い込まれたか、現生人類との異種交配の結果として姿を消したのではないかなどの推測を呼んでいた。

 かつては突飛な説と考えられていた「ネアンデルタール人との交雑」説は2010年以降、ネアンデルタール人の骨から抽出されたDNAの分析が進んだおかげで広く受け入れられるようになった。

 非アフリカ系現代人の全遺伝子の約2%がネアンデルタール人から受け継がれたものであることを同説は示唆している。欧州地域人ではこの割合がさらに高く、最大で約4%に達する可能性がある。