【1月28日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が、日本人の人質の解放と引き換えにヨルダンで収監されている死刑囚の釈放を求めていることについて、アナリストらは、中東の過激派組織に対抗する米国主導の有志連合の結束を弱める狙いがあると指摘している。

 イラクとシリアで制圧した地域で残虐な支配を続けるイスラム国は、ジャーナリストの後藤健二(Kenji Goto)さんの助命を提示することで、ヨルダンと日本、そして米国の関係をぎくしゃくさせようとしている。

 後藤さん解放の代償としてイスラム国が要求しているのは、サジダ・リシャウィ(Sajida al-Rishawi)死刑囚の釈放だ。同死刑囚は、2005年にヨルダンの首都アンマン(Amman)のホテル3か所で起きた同時爆破事件に関与したとして死刑判決を受けた女だ。同事件は「ヨルダンの9・11」とも呼ばれている。

 イスラム国は27日に新たに公開した音声付き画像の中で、リシャウィ死刑囚の24時間以内の釈放を要求。さもなければ後藤さんに加え、同じく拘束しているヨルダン人パイロットのモアズ・カサスベ(Maaz al-Kassasbeh)さんを殺害すると脅迫した。カサスベさんは、シリア上空を戦闘機で飛行中に撃墜され、イスラム国によって拘束されていた。

 イスラム国は先週、人質に取っていたもう1人の日本人、湯川遥菜(Haruna Yukawa)さんを斬首して殺害したとみられており、人質交換は日本政府にとって魅力的な提案にもみえる。

 だがこの提案により、ヨルダン政府は、大口支援国である日本の意向と、カサスベさん解放実現に向けた最大の切り札の確保とを天秤に掛ける必要に迫られている。

 同志社大学(Doshisha University)の内藤正典(Masanori Naito)教授(現代イスラム地域研究)は、もしリシャウィ死刑囚が釈放されることになればヨルダン国民は激怒するだろうと話す。さらに、ヨルダン政府が日本の利益のためだけにリシャウィ死刑囚釈放という最大の切り札を使えばヨルダン国民の怒りはさらに増し、ヨルダン政府は深刻な打撃を受けるだろうと指摘し、非常に厳しい状況だと述べている。