【1月23日 AFP】イスラム教シーア派(Shiite)系の民兵組織に首都が制圧されているイエメンのアブドラボ・マンスール・ハディ(Abdrabuh Mansur Hadi)大統領は22日、辞意を表明した。その数時間前にはハリド・バハーハ(Khalid Bahah)首相とその内閣も辞表を提出しており、同国の政局混迷は深まる一方となっている。

 ハディ大統領は米国と同盟関係にあり、米国が展開する国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との戦いで鍵となる存在だった。ハディ大統領が議会議長に提出した辞表には、国家運営が「完全に行き詰った」ためもはや大統領にとどまることは不可能だと判断したと記されている。

 同大統領は「私は大統領就任時に公約していた目標を達成することができなかった」とつづると同時に、イエメンの政治的指導者らが「事態の鎮静化に向けて国を引っ張っていく」ことに失敗したという見方を示した。

 大統領の辞表提出に先立ち、バハーハ首相も、国家崩壊の一端を担いたくないとして辞意を表明した。

 しかしある政府高官によると、イエメン議会はハディ大統領の辞任については承認していない。この高官が匿名を条件にAFPに語ったところによると、「議会は…大統領の辞表の受理を拒否し、23日午前に臨時議会を招集することを決定した」という。

 政権トップが相次いで辞意を表明するという衝撃の事態は、シーア派の一派のザイド派(Zaidi)に属する民兵組織「フーシ(Huthis)」(別名:アンサルラ(Ansarullah))が昨年9月に首都サヌア(Sanaa)をほぼ完全に制圧し、今週になってその掌握の力を一層強化する動きに出たことに端を発している。

 当局はフーシがクーデターを起こしたという認識を示している。フーシはすでに政権側と現況に幕を引く協定を結んだにもかかわらず、22日も主要な建物の周囲に戦闘員を配置し、17日に拉致した大統領側近も引き続き拘束している。

 欧米が支持しているハディ政権が崩壊すれば、戦略上重要ながら国家として弱体化しているイエメンが完全な混沌(こんとん)状態に陥る恐れが出てくる。(c)AFP/Jamal al-Jabiri