【1月22日 AFP】欧州連合(EU)の専門機関「欧州食品安全機関(European Food Safety AuthorityEFSA)」は21日、食品用缶詰の内面被膜やその他の製品に広く使用されている化学物質「ビスフェノールA(bisphenol ABPA)」の消費者への健康リスクについて皆無と発表した。

 一方でEFSAは、BPA検出試験の精度向上に伴い、BPAの暴露許容濃度を大幅に引き下げた。

 EFSAは「BPAは、現在の暴露レベルが非常に低く、悪影響の原因となる恐れはないため、消費者に何の健康リスクも与えない」としている。今回の結論は、胎児、幼児、思春期の子どもを含む全年齢層にあてはまるという。

 また新たなデータの使用および評価精度の向上で、食品に含まれるBPAの1日当たりの安全量(耐容1日摂取量)を、これまで体重1キロ当たり50マイクログラムから4マイクログラムに引き下げることを明らかにした。

 ただ、食事によるBPA暴露のほか、飲食物、ほこり、化粧品、レジのレシートや現金自動預払機(ATM)の明細書で使われる感熱紙などによるBPA暴露の最大推定量は、新たに定めた耐容1日摂取量の3分の1から5分の1程度だとEFSAは説明している。

 耐容1日摂取量を引き下げた理由は「BPAによるリスク評価の精度が以前に比べて向上した」ためだという。EFSAによると、食事以外の発生源から出るBPAへの暴露を考慮したのは今回が初めて。

 EFSAの専門家、トリネ・フソイ(Trine Husoy)氏は、皮膚を通して人体に吸収される量がどの程度なのかを裏付けるデータが不足していることから、「感熱紙や化粧品からの暴露の推定量の不確実性が実際に高くなっている」ことを認めた。

 BPAは、缶詰の内面被膜や再利用可能なプラスチック製食器類に使われる他、レジのレシートやATM明細書、CDやDVD、電子レンジ調理や冷蔵庫での保管に用いられるプラスチック製容器などに広く使用されている。

 これまでの一部の研究では、脳や神経系の問題、生殖障害、肥満などとBPAの関連性が指摘されていた。また2013年の研究では、BPAの胎児への影響で、出生後に乳がんを発症する危険性が高まる恐れがあるとされていた。

 EU、米国、カナダはすでに、BPAをほ乳瓶に使用することを禁止しており、フランスは今年初めより、全ての食品容器にBPAを使用することを禁止した。

 EFSAによると、BPAの耐容1日摂取量を算出するにあたり、乳腺に加えて生殖系、代謝系、神経行動系、免疫系などに対する潜在的影響も考慮に入れたという。(c)AFP