エボラウイルス、突然変異で治療薬無効化の恐れ 米研究
このニュースをシェア
【1月21日 AFP】エボラウイルスの過去40年間の遺伝子変異が、一部の製薬会社が開発中の実験的治療薬を無効にする恐れがあるとの研究論文が、20日の米国微生物学会(American Society for Microbiology)のオンラインジャーナル「mBio」に発表された。エボラウイルスは、非常に高い致死性を持つエボラ出血熱を引き起こす。
エボラ出血熱を治療するための市販薬や、予防のためのワクチンは存在しない。だが昨年、史上最悪の大流行が西アフリカを襲ったことを受けて臨床試験(治験)が加速した。これまでにエボラ出血熱による死者は8000人以上、感染者は2万1000人以上に上っている。
製薬会社は最近まで、エボラ治療薬に多くを投資しようとする姿勢を示さなかった。アフリカで散発的に発生する傾向があるウイルスの治療薬からは、経済的な見返りがほとんど期待できないからだ。
現在、一部の治療薬は急速に発展しているものの、それらは1970年代にエボラウイルスが初めて出現した当時に特定されたウイルス株に基づき、10年以上前に開発された薬となっている。
最も有望な治療薬の一部は、エボラウイルスの遺伝子配列の一部分に結合してターゲットとする。ウイルスは時間がたつと自然に突然変異を起こすため、これは治療薬が期待通りの十分な有効性を示さなくなることを意味する恐れがあると論文は指摘する。
論文の主執筆者で、米陸軍感染症医療研究所(US Army Medical Research Institute of Infectious Diseases、USAMRIID)のウイルス遺伝学者、ジェフリー・クーゲルマン(Jeffrey Kugelman)氏は「エボラウイルスは、これらの治療薬が設計された時代以降に変化を遂げただけでなく、現在もなお変化を続けている」と話す。
USAMRIIDと米ハーバード大学(Harvard University)、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)の共同研究チームは、西アフリカで現在みられるエボラウイルス株のゲノム(全遺伝情報)を、1976年と1995年に流行したエボラ変異株と比較した結果、現在のウイルス株のゲノムの約3%に、一塩基多型(SNPs)と呼ばれる遺伝子変異が含まれていることを明らかにした。
さらに論文によると、モノクローナル抗体、低分子干渉RNA(siRNA)、ホスホロジアミデート・モルホリノ・オリゴマー(PMO)など、現在臨床試験が進められている治療薬の作用を阻害する可能性のある変異を研究チームは新たに10個発見したという。
10個の遺伝子変異のうちの3個は、ギニア、シエラレオネ、リベリアの3か国を中心に拡大してきた現在の流行が進む間に出現したものだ。
研究チームは治療薬の開発会社に対し、今回発見された遺伝子変異が各社で開発中の薬に影響を及ぼす可能性があるかどうかを調査するよう呼び掛けている。
クーゲルマン氏は「治療薬の有効性をタイムリーに調査し、もはや効き目がなくなった治療薬の開発に貴重な資源を費やすことがないよう注意する必要がある」と話している。(c)AFP