【1月21日 AFP】紀元前79年の伊ベズビオ(Vesuvius)火山の大噴火で黒焦げになった貴重な巻物状の文書が、21世紀の科学技術のおかげで再び読めるようになる可能性があるとの研究論文が20日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 古代ローマ都市ヘルクラネウム(Herculaneum)の遺跡で発見された巻物は、ギリシャの哲学者らが記したと考えられている。同都市は、ポンペイ(Pompeii)の街を壊滅させたのと同じ大噴火に見舞われた。

 ポンペイは火山灰の厚い層の下に埋もれたが、近隣のヘルクラネウムは激しく舞う火山ガスの爆風にさらされた。このとき、まるで溶鉱炉の熱のような高温がヘルクラネウムを襲い、巻物を黒焦げのもろい状態に変えてしまった。

 古代世界から残存した唯一の書庫の一部であるこれらの炭化した手書き文書は、260年前に大邸宅の遺跡で発見された。邸宅は、古代ローマの裕福な政治家カルプルニウス・ピソ・カエソニヌス(Calpurnius Piso Caesoninus)が所有していたものと考えられている。

 現在は伊ナポリ(Naples)国立図書館に収蔵されているこれらの巻物は非常に壊れやすく、ちょっとでも触れると粉々になる恐れがある。

 さらに問題なのは、パピルス上の文字がすすでできたインクで書かれていることだ。そのため、黒ずんだ背景上の文字は、肉眼ではほぼ読み取れなくなっている。

 何が書かれているかを解き明かそうとする試みの中で損傷したり粉々になったりしたパピルス文書があまりに多かったため、考古学者らは失意のうちに調べることを止めてしまっていた。

 だが、イタリアのマイクロエレクトロニクス・マイクロシステム研究所(Institute for Microelectronics and MicrosystemsIMM)などの研究チームが発表した今回の論文では、巻物に書かれた謎の文章が2000年近くぶりに解読される可能性があるとしている。