【1月19日 AFP】北朝鮮の強制収容所での暮らし、拷問、そして大胆な脱出──その証言の内容をつづった著書がベストセラーにもなった同国出身の男性が先ごろ、本に書かれた内容の一部が真実でないことを明らかにした。

 北朝鮮で唯一、強制収容所内で生まれ、脱北に成功した人物とされる申東革(シン・ドンヒョク、Shin Dong-Hyuk)さんは18日、ソーシャルメディアのフェイスブック(Facebook)に謝罪文を掲載し、「自分の過去の一部について、永遠に封印し、秘密にしておきたかった」と内容の変更について告白した。またこれまで行ってきた北朝鮮による人権侵害行為への反対運動についても止める意向を示した。

 申さんは生まれてから23歳まで、北朝鮮の強制収容所での暮らしを強いられた。当時の痛ましい経験をめぐる申さんの証言を基に書かれた著書「北朝鮮 14号管理所からの脱出(Escape from Camp 14)」では、2005年に脱出するまで拷問され、労働を強制されたことついて詳しく記されている。

 現在は32歳になる申さん。脱北後は、国際社会から孤立する北朝鮮での人権問題に対する反対活動を精力的に進めてきた。昨年は国連人権委員会で証言もしている。

 しかし、同書著者のブレイン・ハーデン(Blaine Harden)氏は最近、申さんの証言内容について一部が真実と異なるようだと自らのホームページで明らかにした。

■発言内容の変遷

 ハーデン氏は、「16日、本の中に書かれていることと、実際に起きたことが大きく異なっていると、申さんが…友人らに対して打ち明けたことを知った。わたしは彼と連絡を取り、変更についての詳細、そしてなぜ本当のことを語らなかったのかを説明するよう求めた」とAFPに述べた。

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)が18日に伝えたところによると、申さんはハーデン氏に対し、「辛すぎる」ために思い出したくない過去があり、「詳細を一部変えた」と述べたとされる。またこの変更が問題にならないと考えていたと話したという。

 申さんはこの件について、フェイスブック上で「本当に申し訳ない」との謝罪の言葉を記し、次のようにコメントした。

「わたしたちは、詳細がすべて明らかにならなくても、特定の部分が明確にされなくても、それは問題にはならないと自分らに言い聞かせている」「これまでずっと支援してくれた人たち、私を信じ、信頼してくれた人たちには心から感謝します。そして心から、本当に申し訳なく思っています」

 ただ、変更の詳細については、フェイスブックでは明らかにされなかった。