イスラム国、イラク北部でヤジディー教徒200人解放
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【1月18日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)派の過激組織「イスラム国(Islamic State、IS)」は17日、数か月間拘束していたイラク北部のクルド系少数派ヤジディー(Yazidi)教徒200人余りを解放した。大半は高齢者だったという。当局者と活動家らが明らかにした。
ヤジディー教徒の人権問題に取り組んでいる活動家はAFPに対し、解放された約200人はモスル(Mosul)で拘束されていたと語った。これまでに身元が特定されたのは196人で、今後さらに増える見通し。一部は身体に傷や障害を負い、精神面や心理面の問題に苦しんでいる人が大勢いるとしている。
ヤジディー教徒らは、キルクーク(Kirkuk)南西の前線で解放された。キルクークとアルビルの当局者は、モスルからハウィジャ(Hawija)経由で身柄を移されたとしている。一行はクルド自治区の治安部隊ペシュメルガ(Peshmerga)に引き渡され、同自治区の中心都市アルビル(Arbil)に向かう途中のアルティンキョプリュ(Altun Kopri)の保健センターに搬送された。
保健センターではクルド人の医師や看護師数十人が救急医療処置を施した。センターの門周辺には、ニュースを知ったヤジディー教徒らが、行方不明の親族らとの再会を期待して集まり始めている。
採血を待っているヤジディー教徒らには疲労や衰弱の色が濃く、車いすに乗ったり杖をついたりしている人々も見られた。このうち壊れそうな車いすに乗り、赤と白の布を頭部に被っていた老人は、昨年8月初旬に拘束されて以来、北部イラクを転々とさせられたと語った。「食料が不足していたばかりではなく、長時間不安にさらされたため、とても辛かった」と振り返った。
■拘束継続が負担に?
当局者はAFPに対し、今回の解放が大規模だったのは意外だと述べ、ISとの取引はなかったと述べた。人権活動家は、「ISは(拘束したヤジディー教徒らが)負担になり、食事を与え世話することができなくなったのだろう」とコメント。また、ヤジディー教徒で、昨年8月に国際社会に対して苦境を切実に訴えたイラク連邦議会のビアン・ダクヒル(Vian Dakhil)議員は、「ISは高齢者を拘束し続けることに何もメリットがないと考えた」との見解を示し、「ペシュメルガが日に日に巻き返している事実も奏功したに違いない。ISは圧迫され、再編を続けざるを得なくなっている」と語った。
ダクヒル議員によると、ISに依然拘束されている女性や子供は3000人前後とみられている。(c)AFP/Jean Marc MOJON