【1月15日 AFP】海水温度の急上昇によって引き起こされると考えられているサンゴの壊滅的な「白化」現象をめぐり、サンゴ礁の持つ白化からの回復力を高める可能性がある要因を特定したとの研究論文が、14日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 オーストラリア・ジェームズクック大学(James Cook University)などの研究チームが発表した論文によると、白化現象を起こした後にサンゴ礁が死滅するか否かは、5つの条件で決まる可能性があるという。サンゴは、生物多様性、観光、漁業にかかわる貴重な存在だ。

 今回の研究を率いた同大のニコラス・グラハム(Nicholas Graham)氏は「水深、妨害される前のサンゴ礁の物理的構造、栄養レベル、魚が食べる藻の量、若いサンゴの生存率、これら5つの条件が、サンゴ礁の回復を予測する助けになる可能性がある」と語る。

 サンゴとサンゴを覆う藻類は互いに恩恵を与え合う共生関係にあるが、海洋温暖化の急激な進行および、その他の原因によって関係が阻害されると、サンゴの白化現象が起きると考えられている。

 1998年、サンゴの大量白化という最悪の事態が起き、熱帯諸国60か国のサンゴ礁に影響が出た。この年は、海面水温の上昇をもたらすエルニーニョ(El Nino)現象が非常に顕著だった。

 サンゴは、表面の広大なコロニーに生息する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)と呼ばれる単細胞藻類に依存している。この藻は、サンゴから得られる窒素やリンなどの栄養素を摂取し、光合成を通じてエネルギーに変換し、エネルギーはサンゴの組織内にも取り込まれる。そして、サンゴはこのエネルギーを使って藻を宿すための炭酸カルシウム骨格を形成する。

 ただ、海水温度の著しい上昇などによるストレスにさらされると、サンゴは共生している藻を吐き出してしまう。この藻の存在がサンゴに特徴的な色を与えているため、色素を持つ藻がいなくなると、サンゴは目に見えて白くなる。

 この時点では、まだサンゴは死んでいない。ただ、より病気にかかりやすくなり、共生相手の藻類を取り戻すことができなければ、やはり死滅は免れない。

 グラハム氏の研究チームは、インド洋(Indian Ocean)の島嶼(しょ)国セーシェルで、大量白化が発生した1998年の前後17年間に収集されたデータを詳細に調べ、今回の結論を導き出した。同年の大量白化は、同国のサンゴ面積の9割以上に被害を及ぼした。

 データによると、セーシェルにあるサンゴ礁21か所のうち、12か所は回復したが、9か所は死滅した。研究チームはこの違いを分析して、今回の研究の手掛かりを得た。

 これら要因の特定は、地球温暖化に加え、沈殿物の堆積、魚の乱獲、汚水や肥料の流出といった脅威に直面するサンゴ礁の管理に当たる政策立案者らの一助になるのではと専門家らは期待している。(c)AFP