【1月16日 AFP】ドイツ西部の町が、紛争地域から避難してきた難民たちをナチス・ドイツ(Nazi)の強制収容所だった施設に収容する計画を検討しているとして批判の的となっていると、独誌シュピーゲル(Spiegel)電子版などが今週、報じた。

 ドイツでは、シリアなど戦闘で荒廃した土地を逃れた難民が多数流入し、受け入れ先の確保が急務となっている。各地では学校校舎を転用したり、貨物用コンテナを並べて仮設村を作ったりして対応を図っている。

 こうした中、複数ドイツメディアは13日、西部ノルトラインウェストファーレン(North Rhine-Westphalia)州の町シュワルテ(Schwerte)の当局が、およそ20人の難民をナチス・ドイツが設置したブーヘンバルト(Buchenwald)強制収容所の施設だった建物に収容する計画を検討中だと伝えた。

 ブーヘンバルト収容所は、第2次世界大戦中にナチス・ドイツが設けた国内最大規模の強制収容所。1937年~45年に25万人近くが同収容所と136か所の関連施設に送られ、軍需工場での強制労働を強いられた。欧州各地から収容された人々は、悲惨な状況下で飢えに苦しみながら死ぬまで働かされ続け、また医学的実験で殺害されたり到着直後に処刑されたりして、終戦までの8年間に計5万6000人が死亡したとされている。

 報道によると、難民の収容先として挙がっている施設は収容所の看守棟だった建物で、13日にシュワルテの町議会議員や関係者がこの建物を視察したという。

 ノルトラインウェストファーレン州移民難民局のビルギット・ナウヨクス(Birgit Naujoks)局長は、シュピーゲル誌に対し「憂慮すべき計画で、当惑している。控えめに言っても、無神経だ」と計画を批判した。

 この看守棟は、これまでにも倉庫や芸術家の工房、幼稚園などさまざまな用途に使われてきたと報じられているが、ナチス強制労働資料センター(Documentation Centre on Nazi Forced Labour)のクリスティーヌ・グラウニング(Christine Glauning)館長は「今後も、この施設を利用し続けるべきだという根拠にはならない」と述べている。(c)AFP