新たな抗生物質を画期的手法で開発、耐性菌問題に突破口か
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【1月8日 AFP】(一部更新)薬剤耐性菌の問題を相殺し得る新しい抗生物質を画期的な手法で開発したと、欧米の研究チームが7日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。既にマウス実験は終了し、5~6年後には臨床試験が始まる見込みで、細菌感染症の治療における突破口として期待がかかる。
研究チームは「iChIP」と呼ばれるスクリーニング手法を用い、人工的な環境での培養が難しい土壌中の細菌を培養することで、自然界に存在する抗菌化合物を発見し「テイクソバクチン」と名付けた。
培養実験では、皮膚や血液、肺の感染症を引き起こすブドウ球菌や結核の耐性菌、下痢の原因となるディフィシル菌、炭疽(たんそ)菌が、テイクソバクチンにより死滅した。また、強い薬剤耐性を示す黄色ブドウ球菌に感染させたマウスの治療にも効果があった。マウスに副作用は見られなかったという。
テイクソバクチンは、細菌の細胞外壁を構成する脂肪分子と結合することで効力を発揮する。この結合点は「保存性が高い」ため、薬剤耐性につながる変異が起きにくいという。
抗菌薬としては、一般的な抗生物質が効きにくい細菌に対して使われる強力な抗生物質だが既に耐性菌が見つかっているバンコマイシンと似た働きをする。米ノースイースタン大学(Northeastern University)のキム・ルイス(Kim Lewis)教授は、「バンコマイシンの耐性菌出現までは30年かかった」と指摘し、テイクソバクチンの耐性菌が出るのは「30年以上先になる」と期待を示している。
また「iChIP」により、さらなる新薬の発見に道が開かれた。研究チームは、「(テイクソバクチンと)同様に薬剤耐性ができにくい天然化合物が、今後も自然界から見つかる可能性がある」と述べている。
一方、英バーミンガム大学(University of Birmingham)のローラ・ピドック(Laura Piddock)教授(微生物学)は、「iChIPが大変革をもたらすかもしれない」とコメントした。(c)AFP/Richard INGHAM, Elisabeth ZINGG