【1月8日 AFP】好調な米国経済における矛盾の一つとして指摘されているのが、失業率が6年ぶりの低水準に低下しているにもかかわらず、労働者の平均賃金がほぼ横ばいになっていることだ。

 この異常な現象を受けて、2008~09年の景気後退からの米経済の回復は、十分に強いものだと本当に言えるのだろうかとの疑問が上がっている。

 失業率は現在、2009年の10%から大幅に改善して5.8%にまで下がっており、理論的には賃金が上昇するはずだ。雇用可能な労働者が減少することで、雇用主は賃金上昇を強いられるからだ。

 だが現実には実質賃金はほぼ横ばいとなっている。

 米連邦準備制度理事会(Federal Reserve BoardFRB)のジャネット・イエレン(Janet Yellen)議長は昨年8月、「現実には、賃金はほぼ横ばいで、労働生産性の向上率よりも上昇率が低い」と述べていたが、この傾向はその後も変わっていない。金融危機以前の2007年、年間賃金上昇率は3.9%だったが、昨年11月の同上昇率はわずか2.1%だった。

 サンフランシスコ連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of San Francisco)の調査によると、2014年11月までの1年間で賃金上昇がなかった労働者は15%で、これも2007年の同12%よりも悪化していた。

 米ホワイトハウス(White House)も昨年12月、失業率の改善を歓迎する一方で、「賃金をいっそう上昇させ、雇用の質と賃金上昇に関わる長年の問題を解決するため、さらに多くの取り組みが必要だ」と述べ、この問題を指摘していた。

 実際、恒常ドルベースでみると、現在の平均時給20.67ドル(約2500円)は、1964年の19.18ドル(約2300円)をわずかに上回っているに過ぎない。

 特に深刻なのは賃金が最低水準の労働者層だ。米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の調査によると、賃金の最も低い10%の労働者層の週当たりの実質賃金は2000年以降、3.7%縮小していた。一方で、賃金が最も高い層の賃金は9.7%増加していた。(c)AFP/Jeremy TORDJMAN