【12月29日 AFP】ギリシャ沖のアドリア海(Adriatic Sea)で28日早朝、乗客乗員478人を乗せてイタリアの港へ向かっていたフェリーで火災が発生してから36時間が経ち、これまでに少なくとも5人の遺体が発見された。現在もまだ乗組員を中心とする約60人が船に残っている。

 出火したのは、ギリシャのパトラ(Patras)からイタリアのアンコナ(Ancona)に向かっていたイタリアのフェリー、ノーマン・アトランティック(Norman Atlantic)号。28日の火災発生直後に、妻とともに救命艇へ避難しようとし海へ転落したギリシャ人男性1人が死亡した他、29日になって4人の遺体が船体周辺の海面で発見された。

 ギリシャ、イタリア、アルバニア当局による救出活動を調整しているイタリア海軍によると、ヘリコプターによる救出作業は冷たい強風と荒波で難航した。救出された人たちの一部は、低体温症の症状を示しており、船上に残っている人々の健康状態も懸念される。そのため医療チームがフェリー側に乗り込み、救助順位の決定を支援した。

 イタリア人のアルジリオ・ジャコマッツィ(Argilio Giacomazzi)船長(62)以下、イタリア、ギリシャ国籍の乗組員らは、海運の伝統に従い、船を離れるのは最後になるものとみられる。

 一方、救助された人の一部が運び込まれているイタリア南部の港湾都市バーリ(Bari)の検察当局は29日、刑事捜査を立ち上げたと発表した。火災の発生過程や、大規模な火災になるまで火の勢いが強まった理由について、過失の可能性も含め捜査する。

 フェリーの所有者は、19日に防火扉を含む技術検査で合格していたと強調している。一方、早期に救出された生存者の1人からは、乗組員の緊急時対応や避難誘導に問題があったという指摘も出ている。(c)AFP/Francesco MONTEFORTE