【1月14日 AFP】犬のティッティとタト、カルメーラは、喜びの吠え声をあげると、イタリア北部ミラノ(Milan)近郊にあるボッラーテ(Bollate)刑務所の廊下を走り抜ける。受刑者らは3匹を取り囲み、おやつをあげ、体をなでたり抱きしめたりして、ありったけの愛情を注ぐ──。

 この日は定期的に実施されているペットセラピーの日。犬を活用したセラピーを提供する団体「ドッグス・インサイド(Dogs Inside)」の創設者であるバレリア・ガリノッティ(Valeria Gallinotti)さん(47)は、ラブラドルレトリバーとドーベルマン、そして雑種犬を1匹ずつ連れて、刑務所を訪れた。イタリア国内でも模範的な矯正施設となっている同刑務所では、このような活動を通じ、再犯率を過去最低水準で保持することに成功している。

 殺人や性犯罪で有罪判決を受けた受刑者らは、犬を抱き上げてキスをしたり、ふわふわした犬の体に手をうずめたり、運動場でテニスボールを投げ、犬に拾いに行かせる遊びを延々と続けたりしている。雨が降り出しても気に留めることもない。

 ガリノッティさんはAFPの取材に対し、「ずっと以前から、刑務所にペットセラピーを導入したいと願っていた。刑務所は全く愛情を感じられない場所だからだ。犬はそうした場所にも平穏な良い雰囲気をもたらすことができ、受刑者たちに感情的な結び付きやスキンシップを経験してもらうことができる」と語った。

 ボランティアでこの活動を行うガリノッティさんは週に1度、受刑者たちに犬のしつけ方やペットセラピーの効果について教えている。希望する受刑者たちは出所後、刑務所でペットセラピーを提供する活動に従事できる可能性もある。

 殺人罪で終身刑を受け服役中のナザレノ・カポラーリ(Nazareno Caporali)受刑者(53)は、「昔から動物が大好きだった。猫と犬を一匹ずつ飼っていたよ。ペットセラピーは素晴らしいね」と話す。

 自由時間を使って犬と触れ合いつつ、3つ目の学位取得に向けた勉強に励んでいるという同受刑者は、ペットセラピーの楽しさを誰かに伝えたいと考えている。

「いつの日か、アルツハイマー病の患者や精神的な問題を抱える子どもなどとのペットセラピーを通じ、自分たちが得たものを、自分たちに与えられたのと同じ尊厳をもって、別の人たちにも与えてあげられたらいいと思う」と、遊び疲れて眠そうにうずくまったティッティの隣で、同受刑者は語った。