【12月28日 AFP】ロシアの首都モスクワ(Moscow)近郊で製造されるカマンベールチーズは、見た目も匂いも有名なフランス産に似ているかもしれない。欧州産チーズの輸入禁止に伴い在庫が底をつく中、ロシアではカマンベールなどの模造品市場が好景気に沸いている。

 ロシア西部ブリャンスク(Bryansk)産のモッツァレラやシベリア(Siberia)南部アルタイ(Altai)のロックフォールなどのチーズも活発に取引されている。このような商売はウクライナ情勢をめぐり対露制裁に踏み切った国を対象に農産品と食料品の輸入を禁止・制限した今年8月以降、急速に成長した。

 モスクワの北約100キロのゴロフコボ・マリノ(Golovkovo-Maryino)でヤギの乳のカマンベールを製造するドミトリーさんは、「ヤギ乳の加工量は、8月には一日に100リットル程度だったのに、今は270~300リットルだ」と語る。「制裁に関係していると思う。以前は輸入品を扱っていた顧客たちが、今は私たちと取引するためにやってくる」

 供給量の不足によって、価格は少なくとも20%上昇した。欧州連合(EU)は「ロックフォール」や「モッツァレラ」といった名称を特定の製法によって特定の地域で作られた製品以外に冠することを禁じており、同様の規制を導入する国は増えつつあるが、旧ソ連時代から国内で生産された「シャンパン」や「コニャック」(どちらの名称もEUの規定で保護されているのだが)に親しんできたロシアでは、チーズ価格上昇を受けてそのようなルールを見て見ぬふりをするハードルはますます低くなっている。

■旺盛な食欲

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が8月に行った欧州輸出品の禁輸措置によって、チーズは果物の次に大きな打撃を受けた。ロシアはこうした食料品を、クリミア(Crimea)半島の編入やウクライナの親露派への支援を行ったロシアに制裁を科した国々から大量に輸入していた。

 EUの生産者らは、毎年平均およそ130万トンの乳製品をロシアに輸出しており、そのうちの90万トンをチーズが占めている。

 ロシア当局は、食品産業の拡大を図ろうと数十億ユーロ(数千億円)規模の野心的なキャンペーンに着手したが、専門家らは懐疑的だ。チーズを求めるロシア国民の旺盛な食欲を満たすためには、まずミルクの生産量を増やす必要があり、それには3年かかるとされる。

 その一方で、アルタイ山脈の起業家らは、フランスを訪問してチーズの製造方法を習得し、独自のカマンベールとロックフォールを完成させつつある。

 またロシアのニュースサイトGazeta.ruによると、フィンランドに近いロシア西部バラーム島(Valaam Island)の修道士らは、イタリアでモッツァレラとリコッタの製造方法を学ぶ講座を受講し、これらのチーズの生産に必要な設備も購入したという。(c)AFP/Paul GYPTEAU