【12月25日 AFP】心臓欠損、てんかん発作、知的障害などを引き起こす恐れのある子どもの発達障害に関連する遺伝子12個を発見したとの研究論文が、24日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 論文を発表した英遺伝子研究機関ウェルカムトラスト・サンガー研究所(Wellcome Trust Sanger Institute)などの研究チームによると、これらの遺伝子は、診断未確定の重度の障害がある子ども1133人とその両親のゲノム(全遺伝情報)の詳細な調査で発見されたという。

 それぞれの症状に関与するDNA変異を特定することで「診断が確定する可能性のある子どもの割合は、これらの新たに関連が示された遺伝子によって10%増加する」と研究チームは記している。

 重度の発達障害をがある子どもの半数以下は、特定の遺伝子診断が下されていない。障害の中には極めてまれなものもあり、症状は人によって異なる場合がある。

 発達障害の診断を目的とした遺伝子研究プロジェクト「Deciphering Developmental DisordersDDD」に参加するウェルカムトラスト・サンガー研究所は、発表した声明で、関与遺伝子を特定することは「新たな治療法の探究の出発点となる」と述べている。

 また関与遺伝子の特定は、一部の人々が発達障害を患う理由を医師らが理解することを助け、障害のある子どもを持つ人に生殖をめぐる選択について情報を提供することが可能になることが考えられる。

 DDDプロジェクトのウェブサイトによると、最も一般的な障害の一部では、発育障害、身体的変形、学習障害や行動障害などを伴うこともあるという。可能性のある症状としては、てんかん、自閉症、統合失調症、発育不良などが挙げられる。

 これら障害を引き起こす遺伝暗号の誤りが生じる原因は何かは分かっていない。遺伝子変異の中には、両親からの遺伝で受け継がれるものもあれば、子どもに初めて出現するものもある。

 発達障害の大半は出生前から始まっているが、負傷や感染症、環境的影響などの要因によって出生後に発現する可能性があるものもある。障害は日常生活の機能に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、その影響は生涯続く可能性がある。

 DDDプロジェクトは、最終的に1万2000家族分の遺伝情報を分析することを目的としている。

 論文の執筆者らは、診断を確定する必要に迫られている家族を助けるための「道徳的要請」に言及しつつ、自身の成果を他の研究者らと共有する意向を表明している。

「発達障害における遺伝子的要因をより多く特定し、診断率を国際的に向上させるためのデータを蓄積することについて、DDDプロジェクトが世界中のより多くの臨床および研究計画の後押しとなることを研究チームは期待している」と声明は述べている。(c)AFP