「国境」の存在問われた2014年、イスラム国とウクライナ情勢
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【12月28日 AFP】世界中で国境は「神聖にして不可侵」と考えられているが、2014年はウクライナ、イラク、シリアで国境が疑問にさらされ、新しい世界秩序に対する不安が生じている。
3月、ウクライナのクリミア(Crimea)半島をロシアが電撃的に編入したことで、 国際社会には怒りと外交戦争が巻き起こった。しかし、そうした憤怒が状況を巻き戻すこともなければ、ロシアの影響下にある分離派がウクライナ東部で起こした紛争を防ぐこともなかった。
6月にはイラク北部一帯でイスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」が蜂起し、隣国シリアに至る領域を支配下に入れ、カリフ(預言者ムハンマドの後継者)制国家の樹立を宣言。欧米諸国を戦慄させた。
「英国とフランスによって1世紀前に画定された国境はかなり恣意(しい)的で、それに対して今、決然と挑んでいるのがISIS(イスラム国の別称)だ」というのは、シンクタンク「米国平和研究所(United States Institute of Peace)」とウッドロー・ウィルソン国際学術センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)の研究者ロビン・ライト(Robin Wright)氏だ。さらに同氏は「根本的な問題は、イラクやシリアが今ある近代の国境を復活させることができるかどうかだ」と述べた。
■国家の空白領域
ライト氏が言及したのは、1916年5月に中東を分割するために英国とフランスの間で調印された秘密協定、サイクス・ピコ協定(Sykes-Picot Agreement)だ。6月にISのメンバーがインターネット上に投稿した画像には、イラク・シリア国境沿いの盛り土を崩す武装勢力のブルドーザーが撮影され「サイクス・ピコの境界線を破壊せよ」という題がついていた。
ライト氏は地域の国境を引き直すとしたらどうなるか、中東のあらゆる階層の数百人に聞き取り調査を行い、その結果を反映させた架空の地図が昨年、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載された。この地図でリビア、イラク、シリア、サウジアラビア、イエメンを14か国に分割しうる可能性を示した。また地図には、イラクとシリア両国北部をまたぐクルド人国家や「スンニ派国家」、「シーア派国家」も描かれていた。ISによる蜂起の前だ。
一方、仏パリ(Paris)を拠点とする地理学者ミシェル・フーシェ(Michel Foucher)氏によれば、中東地域の国境はいまだ揺らいではいない。ただし「国家の空白地域がある。組織された集団がなだれ込んでいるのは、こうした地域だ」という。