【12月24日 AFP】2011年に始まった内戦で、シリア国内の文化遺産約300か所に大きな被害が出ていると国連(UN)が23日、発表した。国連は、世界遺産などを捉えた衛星写真を公開し、シリアだけでなく人類の歴史に計り知れない価値を持つこれらの遺産が、破壊、損傷、略奪により「憂慮すべき事態」に陥っているとした。

 有史以前の村落や古代市場から、世界的に有名なモスクや十字軍(Crusader)の城など、シリアにはかけがえのない遺跡が無数存在しているが、2011年に始まった内戦で、これらの遺産には大きな被害が出ている。

 国連は、行っていた大規模な調査を終え、遺産数百か所を撮影した衛星写真を詳細に分析し、これまでに受けた被害の全容を明らかにしたと述べた。

 対象となった290か所のうち、破壊されたのは24か所。104か所で激しい損傷が見られ、軽度の損傷は85か所に上った。また77か所に損傷の可能性があるという。

 衛星写真をまとめたのはジュネーブ(Geneva)に本拠がある国連人工衛星機関の(UNOSAT)。

 UNOSATは、18の地域に焦点を絞った。そのうちの6地域は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録されている、古代都市アレッポ(Aleppo)、ボスラ(Bosra)、ダマスカス(Damascus)、シリア北部の古代村落群、クラック・デ・シュバリエ(Crac des Chevaliers)の城、とギリシャ・ローマ時代の遺跡オアシス都市パルミラ(Palmyra)だ。

 シリアのかつての商業中心地で、7000年前に集落があったアレッポは、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の軍隊と反政府派との戦闘で、最も大きな被害が出ているという。(c)AFP/Rana Moussaoui