【12月22日 AFP】(写真追加)アルゼンチンの裁判所が、動物園で20年間飼育されてきた雌のオランウータンに対し、より望ましい居住環境で暮らす権利を認めた。動物の権利保護を求めるアルゼンチンの弁護士団体「AFADA」が21日、明らかにした。

 このオランウータンは、ブエノスアイレス(Buenos Aires)にある動物園の囲いの中で20年間を過ごしてきた29歳のサンドラ。AFADAは動物園の環境はサンドラにとって快適なものではなく、サンドラは「不当な監禁状態に苦しんでいる」として「人身保護令状」を裁判所に請求していた。

 弁護士らはサンドラについて、生物学上は人間ではないが、実際に人間と同じような感情を持っていると主張。アルゼンチンの法律に従えば、サンドラは「物」よりも「人」に近い存在とみなされるべきであり、半野生の居住環境に暮らすほうがサンドラも幸福だと訴えていた。

「サンドラは20年もの間、囲いの中で生きてきた。今日下された決定の要点は、彼女がとらわれの環境にある抑うつ状態を乗り越え、自然保護区で自由度の高い暮らしが送れるようになるということだ」と、AFADAに所属するアンドレ・ジル・ドミンゲス(Andres Gil Dominguez)弁護士はTNテレビに語った。

 上訴がなければ、サンドラはブラジルの半野生自然保護区に移送される見通しだ。

 サンドラはインドネシア・スマトラ(Sumatra)島を原産とする種のオランウータンで、1986年にドイツの動物園で生まれ、1994年にアルゼンチンに移された。

 アルゼンチンでは、これまでにもチンパンジー、オランウータン、ゴリラについて、人間に近い理性や感情特性を持っていると認めるよう求める訴えが何度か起こされているが、いずれも却下されていた。(c)AFP