【12月17日 AFP】地球上では生物が主な発生源となっている気体のメタンが、火星上で急増する現象が時折観測されているとの研究論文が、16日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。このメタンの発生源はまだ特定できていないという。

 2012年に火星に着陸して以来、探査を続けている米航空宇宙局(NASA)の無人探査車「キュリオシティー(Curiosity)」によって得られたこの最新の情報は、米サンフランシスコ(San Francisco)で開かれた米国地球物理学連合(American Geophysical Union)総会でも発表された。

 NASAのキュリオシティー計画に参加する科学者チームは、キュリオシティーで収集した20か月分のデータを詳しく調べた結果、火星上のメタンの量が予想よりはるかに少ないことを発見した。NASAは、隕石(いんせき)によって運ばれた有機物や塵(ちり)の分解過程などでメタンが生成されることを想定し、その量を予測したが、実際に検出された量はその半分ほどだった。

 だが、キュリオシティーの着陸地点のゲール・クレーター(Gale Crater)におけるメタンの背景濃度は「場合によっては60火星日(火星の自転周期に基づく火星での1日、1火星日は24時間39分)ほどの間に、約10倍に急上昇した。メタンの滞留時間は約300年とされているので、これは驚くべきことだ」と論文は述べている。

「ゲール・クレーター付近では時折、メタンの生成または放出が起きていること、そしてこのメタンは、これらの放出や生成などの現象が終わるとすぐに消散することを、これらの結果は示唆している」と論文は説明している。

 メタンの急増をめぐっては、その発生源について疑問が生じる──火星には微生物が存在しているのか?

 キュリオシティー計画に参加する米カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のジョン・グロッチンガー(John Grotzinger)氏は、火星での生命体の確認は大発見となるだろうが、確認されたメタンの急増が火星での生命体およびその痕跡の発見を意味するとは限らないとし、さらなる調査が必要と述べた。

 火星上に現在、生命が存在するかどうかを調べるための装置は、キュリオシティーには搭載されていない。だが炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄などの生命の形成に欠かせない要素とされる化学元素を探すことで、火星でかつて生命が発生したかどうかを明らかにすることが同ミッションの目的となっている。(c)AFP