【12月16日 AFP】国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(Reporters Without BordersRSF)」が16日に発表した年次報告書によると、過去1年間で殺害された報道関係者の数は66人に上った。05年以降に殺害されたジャーナリストの総数は720人となった。

 なかでも、米国人記者のジェームズ・フォーリー(James Foley)氏とスティーブン・ソトロフ(Steven Sotloff)氏が、イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」に斬首された事件は、昨今の紛争を取材する際の極度の危険性を浮き彫りにした。

 この1年間で殺害されたジャーナリストの全体数は、「平和な」国での死亡件数が減ったことで1年前の71人からわずかに減った。しかし誘拐の件数は昨年から37%増え119件だった。これはウクライナ東部の分離独立派や、中東から北アフリカにかけて活動している武装勢力の戦術が影響しており、誘拐された国別の内訳はウクライナで33人、リビアで29人、シリアで27人となっている。このうち40人は今も誘拐されたままだ。

 RSFは、ジャーナリストが自国政府に罰せられた例がいくつかあることも指摘している。例えば今年RSFの報道の自由賞(Press Freedom Prize)を受賞したサウジアラビアの市民ジャーナリスト、ライフ・バダウィ(Raif Badawi)氏は、「Saudi Liberal Network(サウジ自由ネットワーク)」というウェブサイトに書いた見解が「イスラムを侮辱している」として9月に、禁錮10年とむち打ち1000回の刑を下された。

 今月8日の時点で獄中にいるジャーナリストは、世界全体で昨年と同数の178人だった。国別で最も多かったのは中国の33人で、次いでエリトリアの28人、イランの19人となっている。

 また紛争により、多くのジャーナリストも家を捨てて避難することを余儀なくされた。リビア人47人、シリア人37人のジャーナリストが国外へ脱出し、エチオピアでは民間メディアに対する弾圧により31人が国外に追放された。

 さらにジャーナリストに対する暴力や手荒な扱いはウクライナで最も多く、これにベネズエラやトルコが続いた。これらの国で今年起きた抗議行動を鎮圧しようとした警察が、ジャーナリストを狙い撃ちにする傾向がみられた。(c)AFP/Eric RANDOLPH