【12月13日 AFP】2030年までにブロードバンド回線によるインターネット接続を劇的に普及させることで、世界経済に大きな成長がもたらされるとする研究結果を、デンマークのシンクタンク、コペンハーゲン・コンセンサス・センター(Copenhagen Consensus Center)が11日発表した。

 同センターがエコノミストらに委託した報告書は、2030年までに発展途上国で無線ブロードバンド回線(モバイルブロードバンド)によるインターネット接続を3倍に増やすことで、22兆ドル(約2600兆円)もの経済成長をもたらすことができるとしている。

 報告書の試算によれば発展途上国のモバイルブロードバンドの普及率を現在の21%から2030年までに60%に引き上げるためにかかるコストは1兆3000億ドル(約150兆円)。これによりインターネットに接続できる人が約30億人増え、1ドル(約118円)の投資に対し17ドル(約2000円)相当の利益が見込める計算になるという。

 2030年までに有線によるブロードバンド回線の普及率を全世界で現在の10%から30%に引き上げた場合や、途上国で6%から20%に増やした場合、いずれも1ドルの投資に対する利益は21ドル(約2500円)になるという。

 今回の研究は100人を超える経済学者たちのネットワークが、世界の達成目標として議論されているさまざまな事業の費用・便益分析を行っているプロジェクトの一環として行われた。驚くことに純粋に経済学的な観点からのみ言えば、ブロードバンド接続の普及率を引き上げることが他の多くの事業よりも「驚異的に大きな」経済成長をもたらすという結果が出た。

 コペンハーゲン・コンセンサス・センターのビョルン・ロンボルグ(Bjorn Lomborg)所長によれば、投資1ドル当たり45ドル(約5300円)の利益があるとされる子どもの栄養不良の解消など、ブロードバンド拡充よりも費用対効果の高い事業もいくつかあった。しかし、上水道の普及や公衆衛生の改善は投資1ドル当たりの利益が3~5ドル(約360~590円)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者の治療は同2.5ドル(約300円)と、費用対効果はあまり高くなかった。また森林保護では利益よりも費用のほうが上回るとしている。

 ロンボルグ氏は、これらの事業の便益を純粋に経済的な利益だけで計算するのは冷たいと感じられるかもしれないが、崇高な目標を掲げた事業はほぼ無限にある以上、どの事業に投資するか考える際に費用と利益を知っておくことは重要だと強調し、正当な理由があれば、費用対効果が低い事業であっても投資すべきではないということにはならないと指摘した。(c)AFP