【12月11日 AFP】(一部更新)米中央情報局(CIA)がテロ容疑者に行っていた過酷な尋問の実態を明らかにした米上院報告書について、ディック・チェイニー(Dick Cheney)前米副大統領は10日、「ひどい内容」で「全くのたわごと」だと激しく批判した。

 チェイニー氏は、自身が副大統領を務めたジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前政権下で採用された「強化された尋問手法」について、完全に正当化できると主張。「9.11同時多発テロの犯人を捕らえ、さらなる攻撃を防ぐため、まさに必要なことを行っただけだ。そして、われわれはその両方に成功した」と米FOXニュース(Fox News)に語った。

 上院が9日に公表した500ページ余りの報告書は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の容疑者に対してCIAが使っていた暴行や直腸栄養法、睡眠妨害などの尋問手法を、これまでに確認されていた以上に残虐なうえ、有用な情報をもたらさなかったと酷評。CIAが意図的に、収集した情報の価値をめぐる議会とホワイトハウスの判断を誤らせたと結論付けた。

 チェイニー氏はこれらの指摘を真っ向から否定。「この報告書は全くのたわごとだ」「昨日は『ばかな!』と言ってしまった。申し訳ないが、実際に使った言葉で言わせてもらう」と、公的な場での使用が下品とされる俗語を大声で言い放った。

 その上でチェイニー氏は、上院の調査には「大きな欠陥」があり、「尋問プログラムに関与した主要な人物への聞き取り調査を行おうとさえしなかった」と非難した。

■ブッシュ前大統領は「知っていた」

 上院報告書は、ブッシュ前大統領がこれらの尋問手法に関して報告を受けたのは導入から4年後の2006年で、ブッシュ氏は報告の内容に「不快感を示した」としている。しかし、チェイニー氏は「大統領も尋問プログラムの不可分の一部であり、大統領の許可は不可欠だった」と述べ、ブッシュ氏が蚊帳の外に置かれていたとの報告を否定した。

 一方、ブッシュ氏が各尋問手法の詳細を細部まで認識していたのかという質問に対しては、チェイニー氏は曖昧な返答にとどまり、「手法について議論はした。大統領を議論から排除しようとはしなかった」とのみ語った。

 またチェイニー氏は、9.11米同時多発テロを首謀したと自白しているハリド・シェイク・モハメド(Khalid Sheikh Mohammed)被告など、重要な容疑者を尋問する取調官は断固たる態度でなければならないとの見解を示唆し、次のように述べた。

「容疑者の両頬にキスをして『お願いです、どうかご存知のことを教えて頂けませんか』と聞くべきなのか?もちろん、そんなわけはない」 (c)AFP