【12月5日 AFP】すべての産油大国が平等なわけではない──石油輸出国機構(OPEC)が減産を見送り現行生産量の維持を決めたことで、加盟諸国が「持てる産油国」と「持たざる産油国」に二分されている。その差を特に思い知っているのは、歳入の大半を石油に依存するベネズエラやナイジェリア、イランだ。

 OPECは11月の総会で、生産枠を現行の日量3000バレルに据え置くことを決定。これを受け原油価格は急落し、約4年半ぶりの安値をつけた。ロシアも収入の半分を原油に依存することから、通貨ルーブルの対ユーロ相場が年初より40%以上下落するなどOPEC非加盟国にも影響が広がった。

■準備金の有無で大きな差

 OPEC加盟国の中でも財政に余力のある国は、米国のシェールオイル台頭を前に、エネルギー市場における自分たちのシェアを守ろうと長いこと画策している。一方、財源の乏しい産油国は、財政収支の均衡や経済の立て直しを図るため、原油価格の上昇を切望している。

 減産見送りを主張したサウジアラビアなどの湾岸諸国とは異なり、ベネズエラやナイジェリアは、価格変動による影響を緩和する役目を果たす政府系ファンド(SWF)を持っていない。

 エネルギー市場コンサルタント会社、WRTGエコノミクス(WRTG Economics)のエコノミスト、ジェームズ・ウィリアムス(James Williams)氏は「価格変動を乗り切るための資金留保がない加盟国が予算計上の前提としていた価格シナリオは、今回の決定でまったくずれてしまった」と説明する。そうした産油国の多くが財政収支を均衡させるためには、原油価格は1バレル当たり100ドルを超えることが必要だが、現在ニューヨーク、ロンドン市場の原油価格はいずれも1バレル70ドル前後で推移している。

■デフォルトの影も…ベネズエラ

 減産見送りによって最も大きな打撃を受けると思われるのが南米ベネズエラだ。同国は石油の確認埋蔵量が世界最大だが、財政は圧倒的に石油収入に依存しており、外貨準備高に占める石油収入の割合は実に96%に上る。

 元々、収支の均衡をとることにも苦戦しているベネズエラにとって、原油価格の下落は悪い知らせでしかない。OPEC減産見送りを受けて、同国のニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領は11月28日、痛みを伴う予算削減を発表した。自国通貨の大幅な切り下げを行ったり、中国へ救済融資の依頼を行ったりもしている。ウィリアムス氏は「1バレル90ドルを切る状態を、1か月以上は乗り切ることができないほど外貨準備高が少ないベネズエラにとって、この事態は明らかに惨事だ」という。

 キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)のアナリスト、デービッド・リーズ(David Rees)氏は「原油価格下落で、ベネズエラはデフォルト(債務不履行)に陥る可能性にさえ近づいた」と指摘。「外貨準備には過去10年の原油価格高騰時の保留分はなく、石油収入がなくなれば政府が保有する外貨は一切消えてしまうだろう」という。他のアナリストたちからは、原油安を受けて、今年前半ベネズエラを揺るがし流血の事態にもなった反政府デモの再燃を懸念する声も聞こえる。(c)AFP/Katell ABIVEN