【12月3日 AFP】中国の競泳選手で、ドーピング違反により3か月の出場停止処分を科されていたことが発覚した孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)が、拠点としているオーストラリアでの練習を禁止された。豪紙が3日に報じた。

ロンドン五輪で2つの金メダルを獲得し、1500メートルで世界記録を保持している孫は、5月の薬物検査で興奮剤「トリメタジジン(trimetazidine)」の陽性反応を示し、3か月の出場停止が言い渡された。

 孫の出場停止期間は8月17日で終了しているが、中国がそれを発表したのは先週になってからだった。

 これを受けて、オーストラリア水泳連盟(Swimming Australia)の「ハイパフォーマンス部」を率いるマイケル・スコット(Michael Scott)氏は、孫のオーストラリア人コーチであるデニス・コッテレル(Denis Cotterell)氏と会い、孫はもはやオーストラリアでは歓迎されないと伝えた。

 スコット氏はこの日発行されたブリスベーン・クーリエメール(Brisbane Courier-Mail)紙で、「先週の火曜にデニスと会った」と話した。

「2人で話し合い、われわれの方針に従った結果、デニスから中国水泳連盟(Chinese Swimming Federation)に伝えてもらった。今後(ゴールドコースト(Gold Coast)の)マイアミを含むわれわれの練習施設で、孫楊が練習することを認めないとね」

 スコット氏はまた、オーストラリアの水泳の品位を守ることが何よりも大切だと話し、「とてもストレートな決定だが、デニスも支持しているし、すでに実行に移されている」と話した。

 さらに同紙によれば、コッテレル氏は孫との師弟関係を解消するつもりだという。同氏は1500メートルの元世界記録保持者、グラント・ハケット(Grant Hackett、オーストラリア)氏を指導するなど、オーストラリア有数のコーチとして知られている。

 そのほかにもスコット氏は、国外選手にオーストラリア国内での練習許可を与える際の基準を厳格化し、今後は大会での薬物検査とは別に、オーストラリア反ドーピング機関(ASADA)の検査を受けることを義務づけると話した。

「今回のようなことが起きれば、当然、現状を見直す必要が出てくる。そこで、国外のスイマーがわれわれの練習施設を使用したい場合は、ASADAに登録して薬物検査を受けてもらうことに決めた」

「彼らには薬物検査の費用を含め、権利料を払ってもらう必要がある」

 中国の連盟関係者は隠ぺいの可能性を否定し、出場停止期間が異例の短さになったのは、禁止薬物の摂取が意図的なものではないとの確信が得られたためだと主張した。

 しかし、世界反ドーピング機関(WADA)は先週、AFPに対し、今回の件をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴する可能性を示唆している。世界反ドーピング規則に従えば、薬物違反は20日に以内に公表しなければならないが、今回の中国水泳連盟の対応はこれに違反している。(c)AFP