【12月2日 AFP】トルコを訪問中のウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)ロシア大統領は1日、ロシアの天然ガスを欧州に運ぶ数十万ドル規模のパイプライン「サウスストリーム(South Stream)」計画を打ち切る方針を突如表明した。欧州連合(EU)がパイプラインの建設を阻害しているためと説明している。

 プーチン大統領は、5年にわたってロシア政府の主要プロジェクトの一つとされてきたこのパイプライン計画を中止する方針であること、また今後はトルコが天然ガス拠点として重要な役割を果たしていくはずだという考えを示した。

 ウクライナ危機をめぐり、欧州との関係が急激に悪化したプーチン大統領はEUに対し、ロシアからの天然ガス供給量が減る恐れがあると警告し、ロシアは新規市場を開拓していく意向だと述べた。

 トルコの首都アンカラ(Ankara)でレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)トルコ大統領と共同記者会見に臨んだプーチン大統領は、欧州委員会(European Commission)がブルガリアに対し、同国の領水内での作業を中止するよう強制したため同パイプラインの建設ができなくなったと指摘。「ブルガリアからの許可がいまだに出ていない以上、現状ではロシアはこの計画の実現を目指していくことはできないと判断した」と発表した。

 ロシアの報道各社は、ロシア国営ガス会社ガスプロム(Gazprom)のアレクセイ・ミレル(Alexei Miller)社長が「その通りだ。計画は打ち切られた」と語ったと伝えている。

 さらにロシアの各通信社によると、ガスプロムはこのサウスストリーム計画にすでに47億ドル(約5560億円)を投資しているという。先には、総工費はおよそ200億ドル(約2兆3700億円)に上るという試算も出ていた。

 このパイプラインは黒海(Black Sea)のトルコの領海を経てバルカン半島(Balkans)を通り、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニアを通過してオーストリアに入り欧州の主要パイプラインネットワークに接続する計画だった。

 EUに加盟しているブルガリアは、以前はサウスストリームパイプラインを強く支持していたが、EUと米国から公然と強い圧力を受け、今年6月に方針転換していた。(c)AFP/Fulya OZERKAN, Stuart WILLIAMS in Istanbul