ネット上の殺害脅迫は「言論の自由」か、米最高裁の判断に注目
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【11月30日 AFP】米最高裁は12月1日に、米交流サイト(SNS)フェイスブック(Facebook)に投稿された殺害の脅迫は訴追の対象となるのか、それとも言論の自由を保障した米憲法の下で保護されるのかという画期的な判断を下す。
ラップミュージックの熱烈なファンであるアンソニー・エロニス(Anthony Elonis)被告は、2人の子供を連れて被告の元から去った妻の殺害をほのめかすような歌詞をフェイスブックに投稿。妻は「極度の恐怖」を感じたとして、エロニス被告が妻に接近することを禁じる保護命令(Protection From Abuse、PFA)を取得した。
それでもエロニス被告はフェイスブックに、妻だけでなく米連邦捜査局(FBI)の捜査員と被告を解雇したアミューズメントパークへの脅迫や、近所の学校への銃撃をほのめかす投稿をして逮捕され、インターネット上での脅迫の罪で起訴された。
被告は、実際に殺害する意図はなく、歌詞を書いたのは妻との別離の苦しさを紛らわすためだったと主張したが、禁錮3年半と保護観察3年の判決を受けた。控訴審も一審判決を支持した。
エロニス被告は、自らが受けた有罪判決はクリエーティブな表現をする歌手や作家、漫画家などの多くのアーティストに打撃を与えるだろうと主張している。
米最高裁がソーシャルメディア上の言論の自由の保護に関して、言論および報道・出版の自由を制限することを合衆国政府に禁じた合衆国憲法第1修正(the First Amendment of the Constitution)の範囲について検討したのは今回が初めて。
ジョン・マーシャル・ロースクール(John Marshall Law School)のスティーブン・シュウィン(Steven Schwinn)教授(法学)はジョン・ロバーツ(John Roberts)連邦最高裁長官について次のように述べ、過去の裁判で一貫して表現の自由を保護する姿勢を取ってきた米最高裁がエロニス被告に不利な判決を下すとは考えにくいとの見方を示した。
「この裁判で争われているような価値の低い──有害でさえある──言論に対するロバーツの最高裁の立場は明白になっている。ある言論が気に入らなければ言論でやり返せ。ただし政府はそれを禁じることはできない、というものだ」
(c)AFP/Chantal VALERY