【11月30日 AFP】エジプトのホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)元大統領が2011年の民衆蜂起でデモ参加者が死亡したことの責任を問われていた裁判で、同国の裁判所は29日、公訴を棄却する判決を下した。事実上の無罪判決となる。

 法廷が設けられたカイロ(Cairo)郊外の警察学校前では、死亡したデモ参加者らの遺族ががくぜんとした表情を見せた。

 裁判長は公訴棄却の理由として、検察側が治安責任者らの責任が問われていた裁判の被告に後からムバラク元大統領を追加したことを挙げた。エジプトの指導的な人権活動家で弁護士のガマル・エイド(Gamal Eid)氏は、検察側は当初は治安責任者らを起訴したが、世論の圧力を受けてムバラク氏も被告に加えたと指摘した。検察側は上訴する可能性がある。

 判決を受けてカイロのタハリール広場(Tahrir Square)には1000人以上の反ムバラク派が集まり、警察は催涙ガスと放水銃を使用して群衆を排除した。 警察とデモ参加者が衝突し、実弾あるいはバードショット(小型の散弾銃のペレット)に当たった1人が死亡した。

 判決に対する街の人たちの反応は分かれている。50代のある女性は「殉教者たちの正義は失われた」と語った。退職した元公務員のモスタファ・サエド(Mostafa Saed)さんは、「ムバラクに不利な証拠はない。彼は正直な大統領だった」と語った。

 ムバラク元大統領は汚職の罪でも無罪となったが、別の公金横領の罪で3年の禁錮刑を受けており、引き続き拘束される。(c)AFP