スイスでカウベル使用禁止の提言、関係者ら反発
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【11月24日 AFP】チョコレートや時計、そしてアルプスの少女「ハイジ(Heidi)」が有名なスイスだが、ウシの首につける鈴「カウベル」もまた、同国を象徴するものといえるだろう──現在、このカウベルの使用を禁止すべきと提言する研究が国内で激しい反発を呼んでいる。
チューリヒ(Zurich)にあるスイス連邦工科大学(Swiss Federal Institute of Technology)の研究者らは、この長い間使われてきた「カウベル」の騒音レベルが高いことを指摘し、ウシの難聴を引き起こす可能性があると主張している。
さらに首周りのカウベルの重さによってウシは餌をかむ回数が減るとしており、聴力と適切な食性を維持するためにも、代替策としてGPS(全地球測位システム)を使用すべきだとしている。
絵画のように美しい牧場を音をならしながら歩くウシたちからカウベルを取り上げようとするこの動きに対し、農業従事者のロビー団体および一部の政治家たちは怒りをあらわにしており、この研究を非難する署名活動を展開している。
同国の国会議員であり、スイス農民組合(Swiss Farmers' Union)の代表を務めるジャック・ブルジョア(Jacques Bourgeois)氏は、研究者たちはその根拠としている事実に関して無知であり、「我々の伝統や習慣、風習」に対していたずらに疑義を呈していると批判した。
同氏はまた、カウベルをGPSと取り替えるという提案はばかげていると非難しながら、悪天候や霧が立ちこめる状況でも、家畜の位置を特定するために鈴は役立っていると述べた。
スイス政府は、波紋が広がるこの問題に対し、研究の自由を強調しつつも、介入には消極的なスタンスをとっている。
カウベルはスイスの文化にとって不可欠な存在で、カウベルをテーマにした行事も複数存在する。またカウベルはデコレーションにも用いられるほか、伝承では牧場を悪霊から遠ざける力も持っているとされている。(c)AFP