【11月17日 AFP】(写真追加)1989年の大ヒット映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー・パート2(Back to the Future Part II)』に登場した空中浮揚するスケートボードの「ホバーボード」──主人公マーティ・マクフライ(Marty McFly)がこれに乗ってスクリーンに登場して以来、ファンたちは「自分も乗りたい」と夢見てきた。

 このたび、米カリフォルニア(California)州北部のベンチャー企業、アルクスパックス(Arx Pax)の技術者らが、この未来的な機器の実用化に成功し、ついにその夢がかなう時が来た。

 同社が開発したホバーボード「ヘンド(Hendo)」は、導電性のある表面上で使用するもので、円盤形の磁気装置4基によって地面から2.5センチほど浮揚する。スケートボードと同様、ランプのような傾斜路型のプラットフォーム上で乗ることができるヘンドだが、プラットフォーム自体は、磁場を発生させるために金属や電気を通す物質で作製する必要があるという。

 ヘンドには「磁場アーキテクチャー(Magnetic Field Architecture)」と呼ばれる技術が利用されている。お世辞にも静かとは言えないが、複数の方向にスピーディーに動いたり回転したりもできる。また、7分と短いバッテリーの寿命でも、大人が「浮き浮き」する乗り心地を楽しむには十分だ。

 開発元のアルクスパックスは、米クラウドファンディング最大手キックスターター(Kickstarter)のウェブサイトを通じて、同技術を市場に投入するための資金調達を行った。

 妻のジル・エイブリー・ヘンダーソン(Jill Avery Henderson)最高執行責任者(COO)とともに会社を立ち上げたグレッグ・ヘンダーソン(Greg Henderson)社長は、一部が3Dプリンターで作製されているヘンド・ホバーボードの背後にある技術を次のように説明した。

「磁場を発生させ、次にわれわれの『秘伝のソース』の一つである電磁誘導の方法を用いて、この導電面に同じ大きさの二次的な磁場を発生させるのさ」

 この技術についてヘンダーソン夫妻は、あらゆる種類の用途で利用できると考えている。その一例として、地震の発生率が高いカリフォルニアでのビルの耐震性向上を挙げた。理論的には、より強力な磁石を用いることで、ビル全体を一時的に地面から浮かせることが可能だという。ヘンダーソン氏は「地震が発生したとしよう。早期警報を受けて警戒システムが作動すると(コンクリートなどの物理的な)支柱が外れ、ビルは浮揚し始める」と話し、「揺れが止まると支柱が戻り、部屋や建物の中にいる人々は誰も地震が起きたことすら気付かない」と続けた。

 キックスターター上で設定した目標額25万ドル(約2900万円)については、かなり前に到達しており、最初に出荷される10台はすでに予約済みとなっている。1台あたりの価格は1万ドル(約117万円)だという。

 だが、アマチュア発明家向けには、これよりも低価格で開発者向けキットが用意されている。理論的にはあらゆるものを空中に浮かせることが可能と話すジル・ヘンダーソンCOOは、「グレッグがよく言うように、好奇心旺盛な心は、たくさんの心の力。彼らがこの技術を手にすることで、われわれがその存在すら知らなかった数々の問題が解決することになる」と続けた。(c)AFP