【11月16日 AFP】欧州宇宙機関(ESA)は15日、67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Comet 67P/Churyumov-Gerasimenko)に着陸した後、内蔵電池切れで休眠状態に陥った実験用着陸機「フィラエ(Philae)」が、休眠直前に重要なデータを全て探査機「ロゼッタ(Rosetta)」に送信していたと発表した。

 このデータには、待ち望まれていた彗星表面から採取されたサンプルの化学検査結果も含まれている。ESAは「着陸機はその第一の使命は果たした」としている。

 電力不足により、フィラエのほとんどの機能は休眠状態となっている。ロゼッタ計画の科学者マット・テイラー(Matt Taylor)氏は、「フィラエとロゼッタが収集したデータは、彗星をめぐる科学に大きな変化をもたらすだろう」と話す。

 フィラエは12日、2度バウンドして本来の目標から1キロほど離れた同彗星の崖の陰に着陸。ソーラーパネルに太陽光を受けられないため、着陸後最初の60時間に予定されていた作業計画以上のミッションを行うための充電ができなくなった。

 フィラエは電力消費を抑えるため、機体を動かさずに済む「受動的」な作業を実施。写真撮影や彗星の密度、温度の測定、表面から放出される気体分子の採取などを行った。そして最後の段階になって、最も重要かつリスクのある実験として、彗星の物質を分析するために表面をドリルで掘削する作業を実施した。電池残量がレッドゾーンに近づく中、すべてのデータを保存し、ロゼッタに送信する必要があった。

 ESAの科学者ジャンピエール・ビブリング(Jean-Pierre Bibring)氏は「すべてを受信した。素晴らしいの一言だ。実に素晴らしい」と語った。

 ESAは、同彗星が太陽に近づいていく今後数か月のうちにフィラエと交信できる可能性も捨てていない。(c)AFP/Richard INGHAM, Veronique Martinache