【11月21日 AFP】イランで、世界遺産ペルセポリス(Persepolis)などを活用して観光産業を復興しようという動きがみえている。数十年に及ぶ経済制裁を受けて、ホテル建設やインフラ整備は遅れているが、欧米諸国との関係改善を背景に多くの観光客がイランを訪れつつある。

 ペルセポリスはイランが誇る観光資源の一つ。古代オリエント全域を支配した大帝国、アケメネス朝ペルシャの都として、紀元前518年に建設が始まり、完成まで100年以上もの年月を要した。

 イランでは、核問題をめぐって欧米諸国と対立し強硬姿勢を取り続けたマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領が退任すると、2013年の大統領選で、欧米諸国との関係改善を訴えるハサン・ロウハニ(Hassan Rowhani)氏が当選した。米国や他の大国との交渉を再開させようとするロウハニ大統領の姿勢が、観光産業復興を後押ししている。

 ドイツ南部シュトゥットガルト(Stuttgart)から来たエンジニアのトーマスさん(29)は、ニュースでイランについて唯一耳にするのは核問題のことだけだったが、「実際に訪れてみると、外から見聞きする情報とは全く違う。イランの人々はとても親切にもてなしてくれるし、好奇心が強い」と話した。

 現在、イランを訪れる人々の60%は、イラクやクウェート、レバノン、パキスタンからやって来るイスラム教シーア(Shiite)派の巡礼者だ。しかし、イラン政府は欧州やアジア、米国などから購買力のある観光客を再度、呼び込みたい考えだ。

 イラン観光局によると3月までの1年間で、観光客の数は前年比35%増の450万人に達した。観光収入は60億ドル(約6800億円)に上った。

 香港からの団体客を担当するガイドは「観光客が3~4倍増えている」といい「言語によっては通訳できるガイドがいない状態だ」と話した。

 不足しているのは通訳だけではない。マシュハド(Mashhad)やイスファハン(Esfahan)、シラーズ(Shiraz)といった都市には多くのホテルが建設されたが、これらは主に国内の顧客向けで、海外からの観光客を想定したものではない。今後、観光業界では接客のための研修など特定のニーズに対応することが求められる。(c)AFP/Siavosh GHAZI