【11月13日 AFP】イエス・キリスト(Jesus Christ)がマグダラのマリア(Mary Magdalene)と結婚し、子どもも複数もうけていたことを示す新たな証拠を発見したとする書籍が12日に出版された。ただ、本の内容についてはあざけりの声も一部から上がっている。

 この新書「The Lost Gospel(失われた福音)」は、ロンドン(London)の大英図書館(British Library)に収蔵されている古文書と付随の手記2通の新たな解読結果に基づいている。

 この古文書「ヨセフとアセナテ(Joseph and Aseneth)」には、創世記に登場するヨセフの物語が詳細に語られており、その起源は6世紀にまでさかのぼるとされる。

 イスラエル系カナダ人のドキュメンタリーフィルム作家シムチャ・ジャコボビッチ(Simcha Jacobovici)とカナダ人学者のバリー・ウィルソン(Barrie Wilson)の両氏は、この紙片に隠された暗号を発見したとしており、そこにはキリストについての言及があると主張している。

 両氏は声明で、「これは、求婚、結婚、子ども、そしてキリストが成し遂げようとしたことが暗号化された象徴的な形で示されている」と説明。「初期の教会には対立が多かったため、重要な文献は、このような形で隠され、それを破壊しようとする試みから守られていた」と述べている。

 この本には付随するドキュメンタリー番組も制作され、12日にはロンドンで出版記念会見が開かれた。ただ、本の内容については批判的な意見も集まっている。

 英国国教会は、筆者らの主張を一蹴。英オックスフォード大学(Oxford University)のダイアメイド・マカロック(Diarmaid MacCulloch)教授(教会史)は、筆者らの主張は「間違った解釈」に基づいたものだと指摘。「彼らは、これがキリストの人生についての寓意だと言いたいのだろうが、それは違う」と語った。

 カナダ・トロント(Toronto)のヨーク大学(York University)で宗教学の教授を務めるウィルソン氏は、こうした批判は「思い付きの否定的なコメント」で、「神学保護主義」に動機付けされていると非難した。

 2012年には、キリストの妻について言及しているとされる古代のパピルス片が発見されているが、その名前は示されていない。伝統的にキリストは生涯独身だったとされていることから、この紙片の発見もまた論争を巻き起こしていた。(c)AFP