【11月7日 AFP】2003年のイラク戦争開始以降、現地で化学兵器を発見した駐留米軍の兵士らが有毒物質にさらされた規模を米政府が隠ぺいしようとしたとされる問題で、米国防総省高官は6日、兵士による被害報告数が、同省の当初発表を大幅に上回る600件以上に及ぶことを明らかにした。

 今月に入り、この問題について最初に報じた米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は一連の記事の中で、イラクで米軍兵士たちが劣化した化学兵器の処理にあたり、そのことについて口外しないよう指示されていたと報じた。

 同紙が国防総省筋の情報として伝えたところによると、同省は化学物質にさらされた兵士の被害規模を把握できず、また化学物質への暴露によって負傷した可能性のある兵士を適切に追跡することも、治療機会を提供することもできていなかった。

 米政府は03年に侵攻する前、イラクが大量破壊兵器の製造計画を隠していると主張していた。米軍の侵攻後、そうした計画の証拠は確認できなかったが、経年劣化した化学物質の在庫が発見された。同紙によれば、米軍兵士たちはそうした化学物質の扱いについてよく訓練されていなかったという。

 タイムズ紙は当初、有毒なサリンガスやマスタードガスにさらされて負傷した兵士17人について報じたが、その後、さらに8人が名乗り出た。しかし、チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)米国防長官の命令で記録を洗い直したところ、化学兵器と接触したと思うと軍に報告した兵士は数百人に上ることが分かった。ヘーゲル長官は影響を受けたとみられる兵士と退役兵のために新たな検査の実施を命じ、また国防総省では、暴露の可能性に関する相談や治療要請に応えるために専用の電話窓口を開設したという。(c)AFP