【11月6日 AFP】「ここにはいい給料なんてものは存在しないよ。旧東ドイツの会社にはね」と話すのは、ドイツの首都ベルリン(Berlin)から車で1時間半のプレンツラウ(Prenzlau)の労働局から出てきた大型トラック運転手のトーマス・ミールシュ(Thomas Mielsch)さん(46)。

 北部ブランデンブルク(Brandenburg)州プレンツラウは、ベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊から9日で25周年を迎える今でも残る、東西格差をよく表している町だ。失業率が国内最高水準で、9月は14.7%で全国平均6.5%の2倍以上だった。

 ミールシュさんは旧東ドイツを拠点としていた運送会社から解雇されたが、デンマーク系の会社に転職した。解雇された会社の月給は週60時間労働に対して手取り1580ユーロ(約23万円)だった。「同じ労働で給料は2倍になる。西側の会社ならもっと稼げる」という。給料アップの魅力にひかれ、ミールシュさんの友人の3人に1人は西側で働き、家族の元に戻るのは週末だけだ。

 ライプチヒ大学(Leipzig University)のトーマス・レンク(Thomas Lenk)教授によれば、この25年間で西側が統一のために投じた資金は「1.5兆~2兆ユーロ(215兆~288兆円)」に上るという。

 ドイツの勤労者には、所得税の5.5%をいわゆる「連帯付加税」として支払う義務がある。1991年に導入された連帯税は荒廃した旧東ドイツの再建・支援を目的としていて、期限は2019年までとされている。連帯税のおかげで、旧東ドイツの道路や建物の修復が行われてきた。

 だが、旧東ドイツと西側の格差は依然として存在する。最新の公式統計によれば、旧東ドイツの5州の9月の失業率は9.7%で、西側の6.0%を大きく上回った。しかし10年前の旧東ドイツの失業率は西側の2倍の18.4%で、その差は縮小している。また、西側の世帯収入は旧東ドイツよりも約33%多く、個人の資産はほぼ2倍だ。旧東ドイツの国民総生産(GNP)は西側の3分の2にとどまる。

 旧東ドイツと西側の格差、旧東ドイツの経済の弱さについては十分な分析がなされている。多くの多国籍企業は、より良い労働条件や給与条件により西側にとどまり、熟練した労働力を確保する。一方、プレンツラウには銀行やIT関連の職はなく、労働局で求人があるのは農業や医療、観光業が多い。(c)AFP/Romain FONSEGRIVES