【11月6日 AFP】パキスタン東部ラホール(Lahore)近郊の村で4日、キリスト教徒の男性とその妊娠4か月の妻が、イスラム教の聖典コーランを冒涜(ぼうとく)したとの疑いを掛けられ、怒ったイスラム教徒の集団から暴行を受けて死亡した。夫婦の遺体は職場のれんが工場にある窯で焼かれたという。警察は5日、事件に関連し44人を逮捕した。

 親戚らが5日に語ったところによると、3人の子を持つ夫婦は殺害される直前、逃走を防ぐために夫婦が働くれんが工場に監禁された。複数の目撃者によると、夫婦はその後、1500人に上る村人たちに取り囲まれ暴行を受けた上、火のついた窯に投げ込まれた。

 地元警官によれば、事件の発端は、夫の父親が1週間以上前に死去したことだったとみられている。「彼が死去した時、(殺害された)妻は彼の部屋で遺品整理を始めた。部屋にはトランクがあり、妻は使えそうなものを取り出し、ごみを家の前に捨てた」「翌日、ごみを回収した作業員が、中からコーランのページ数枚を回収したと地元の聖職者に伝えた」という。

 同国では事件を受け、キリスト教徒らによる抗議デモが開かれ、人権活動家らからも怒りの声が上がっている。イスラム教徒が多いパキスタンでは、冒涜行為は極めて敏感な問題で、疑惑が立証されない場合でも、しばしば集団暴行の引き金になっている。イスラム教を冒涜したとして有罪になるか、あるいは容疑をかけられただけであっても、自警団員たちの手で暴行され死亡する危険がある。(c)AFP