【11月5日 AFP】米ニューヨーク(New York)市マンハッタン(Manhattan)に来春完成予定の超高層マンション「432パークアベニュー(432 Park Avenue)」をめぐり、批判の声が上がっている。完成後、集合住宅としては米国で最も高い建築物になる。

 その高さは市内のエンパイアステートビル(Empire State Building)をしのぐ425.5メートルとなる予定だが、先日オープンしたばかりの「ワン・ワールド・トレード・センター(One World Trade Center)」は、その124メートルのアンテナを含めると全高541メートルとなり、432パークアベニューが市内で一番高い建造物となることはない。

 米カリフォルニア(California)州ロサンゼルス(Los Angeles)の不動産デベロッパー、CIM Groupが手掛けた432パークアベニュー最上階のペントハウスは、9500万ドル(約108億円)で売れ、また最低1700万ドル(約19億円)のその他の物件も全戸数の半分が既に売却済みだ。「ヘリからの眺め」との宣伝文句にもある通り、432パークアベニューからは、セントラルパーク(Central Park)、大西洋、米コネティカット(Connecticut)州を一望できる。

 超高層、超高級ビルが次々と誕生し、絶えず変化し続けているニューヨークの景色だが、ニューヨーク・オブザーバー(New York Observer)紙の最近の論説には、これらのビル建設について「不愉快な体験」、「爆音」、「絶え間ない騒音」と苦言を呈する言葉が並んだ。

 反対派は、市の規制当局が周辺住民からの意見を反映する機会を設けていないと指摘する。特にミッドタウンの周辺地域では、新たなビルの建設を受けて歴史的建造物が次々と取り壊されており、大富豪が人々を締め出していると批判されている。

 事実、432パークアベニュー建設のために取り壊された歴史的建造物がある。1920年代に建設され、歌手フランク・シナトラ(Frank Sinatra)やプロボクサーのモハメド・アリ(Muhammed Ali)なども滞在したドレーク・ホテル(Drake Hotel)だ。

 ニューヨークにある歴史的建造物の保全を訴える団体「New York Landmarks Conservancy」のアレックス・ヘレラ(Alex Herrera)氏は、市内の高層ビル群を「幽霊船」と呼ぶ。裕福な海外の不動産投資家たちが、こうした物件を購入しても、実際に滞在する期間は年に数週間だけというのがその理由だ。(c)AFP/Jennie MATTHEW