偽ペンギン載せたローバー、個体群調査に有用 研究
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【11月4日 AFP】ペンギンの群れの中に羽毛に覆われた作り物の赤ちゃんペンギンを遠隔操作で送り込み、その反応を見る実験についての研究論文が、2日の米科学誌「ネイチャー・メソッズ(Nature Methods)」に掲載された。論文によると、親ペンギンたちが強い警戒感を示すことはなかったという。実験は個体群調査を目的としている。
仏ストラスブール大学(University of Strasbourg)などの研究者らが参加した国際研究チームは、インド洋に浮かぶポゼション島(Possession Island)のキングペンギンと南極のコウテイペンギンを対象に、ローバー(四輪車)に載せた作り物の赤ちゃんペンギンを使って群れの心拍数と反応を測定した。
ローバーには、調査目的で一部のペンギンに取り付けられた電子識別タグからの信号を受信するアンテナが取り付けられている。識別タグは、皮下に挿入される1グラムに満たない極小のチップだ。ただこの信号は、60センチ以上離れると読み取ることができないため、データの収集にはコロニーへの立ち入りが必須条件となっている。
ローバーを使った今回の実験では、ペンギンたちの警戒心が、人間の存在が近くにある時よりもかなり低いことが分かった。ペンギンたちは、作り物のペンギンを載せなかった場合でも、高い警戒心を示すことはなく、ローバーは至近距離まで近づくことができた。
論文によると、作り物のペンギンを載せた状態でローバーを送り込んだ場合、ペンギンたちはローバーが信号を読み取れる距離まで近づくことを許したばかりか、この作り物に対して「声かけ」の様な仕草も見せた。また、ペンギンの赤ちゃんたちが身を寄せ合い、ひとかたまりになっている場所に接近した際にも、親鳥たちは特に警戒する様子を見せなかったという。
今回の実験について、ストラスブール大学のイボン・ル・マホ(Yvon Le Maho)氏は、この新たなローバーを使うことで「より倫理的な研究を行うことが可能となるだけでなく、生息地を乱すことから生じる科学的な偏見も避けることができる」と述べている。(c)AFP