【10月29日 AFP】心臓発作を起こした人のもとに、生死を分ける発作後の数分以内に除細動器を空から届けることが可能な「救急無人飛行機」の試作機が28日、オランダの大学に所属するベルギー人学生によって公開された。

 オランダ・デルフト工科大学(Delft University of Technology)の大学院生、アレック・モモン(Alec Momont)さん(23)が開発したこの無人飛行機は、最高時速100キロで飛行できる。

「欧州連合(EU)では毎年約80万人が心停止を起こしているが、生存率は8%しかない」とモモンさんはデルフト工科大で語った。

「この無人機を開発した主な理由は、救急隊が現場に到着するまでの時間は約10分と比較的長いのに対し、脳死や死は4分から6分で起きることにある」とモモンさんは声明で説明している。

「この救急無人飛行機は、12平方キロの範囲内であれば1分以内に、除細動器を患者のもとに届けることができる。これにより、生存率は8%から80%に上昇する」

 救急サービスを表す黄色で塗装され、6個のプロペラで駆動するこの無人機は、重さ4キロの荷物を運搬できる。今回の場合、運ぶのは除細動器だ。

 無人機は携帯電話での緊急通報を探知し、GPS(全地球測位システム)を使って現場に向かう。

 無人機が現場に到着すると、救急医療隊員などの操縦者は、機体に機載されたカメラを通じ、現場の状況を映像で確認し、患者のそばにいる人に指示を伝えることができる。

 オランダの日刊紙アルヘメン・ダフブラット(Algemeen Dagblad)によると、この試作機には首都アムステルダム(Amsterdam)など複数の都市の救急隊が興味を示しているという。

 モモンさんは、自身の開発した無人機が、火災で閉じ込められた人に酸素マスクを運んだり、糖尿病患者にインスリン注射を届けたりする「空飛ぶ医療用具箱」になることを構想している。

 だがモモンさんによると、操縦メカニズムの開発や使用に関する法律問題などに関する課題が残っているという。

 モモンさんは、オランダ全土を網羅する救急無人機ネットワークを5年以内に構築したいと語った。無人機1機の価格は、1万5000ユーロ(約210万円)前後になる見込み。(c)AFP