ココアの「フラバノール」で記憶力低下が改善、米研究
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【10月27日 AFP】ココアに含まれる生物活性物質が、被験者グループの年齢による記憶力低下を劇的に改善させることを確認したとの研究論文が、26日の英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」に掲載された。
米コロンビア大学メディカルセンター(Columbia University Medical Center)などの研究チームが発表した論文によると、実験では「フラバノール」と呼ばれる化合物を含有するココア飲料を被験者らに摂取してもらい、それぞれの脳の状態を測定した。
実験では、50歳~69歳の健康な被験者37人に、高用量900ミリグラム、もしくは低用量10ミリグラムのフラバノールを含有するココアを、3か月にわたり毎日飲ませ、海馬の「歯状回(しじょうかい)」と呼ばれる主要部位の血液容量を脳撮像で測定した。歯状回は記憶の形成に関わる部位で、その処理能力は通常、年齢とともに低下する。
研究チームはさらに、被験者がココア飲料を飲み始める前と後で記憶力テストを行っている。テストでは歯状回によって制御される種類の記憶を評価するために考案された20分間のパターン認識課題が出された。
実験の結果、高用量のフラバノールを摂取したグループは、記憶力の大幅な改善を達成した上、歯状回への血流量の増加もみられた。
コロンビア大メディカルセンターのスコット・スモール(Scott Small)教授(神経学)は「実験開始時に被験者が典型的な60歳代の記憶力を持っていたとすると、3か月後の被験者の記憶力は平均して典型的な30代か40代のものになっていた」と話す。ただ、これら初期の研究成果を検証するためには、グループの規模を拡大して実験を重ねる必要があると注意を促した。
フラバノールは大きな関心を集めている化合物で、世界規模で急増する高齢者人口の加齢による記憶力低下の問題に薬を使わずに対処できる可能性があるとされている。フラバノールは、ブドウ、ブルーベリーなどの果物や、一部の野菜や茶などに含まれているが、その種類や含有量はそれぞれに大きく異なっている。
ココアに含まれる種類のフラバノールについては、歯状回の処理能力を向上させることがマウス実験によるこれまでの研究で判明していた。
スモール教授は、AFPの電子メール取材に「人間とマウスの歯状回はとてもよく似ている」と語り、「フラバノールが人間の歯状回の機能を、特に高齢の人間で向上させることを実際に示したのは、今回の研究が初めてだと思う」と述べた。(c)AFP/Richard INGHAM