下半身麻痺の男性、再び歩行可能に 鼻から神経細胞移植で
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【10月22日 AFP】2010年に負った刃物による外傷で、下半身が麻痺したポーランド人の患者が、損傷した脊柱への神経細胞移植手術により再び歩行できるようになったとする研究論文が、21日の学術誌「細胞移植(Cell Transplantation)」に掲載された。
国際チームによる今回の治療では、移植周辺部分での神経線維の回復を目的に鼻腔にある嗅神経鞘細胞(OEC)が使われた。ポーランド・ヴロスラフ大学(Wroclaw University)のコンサルタント脳神経外科医Pawel Tabakow氏が率いる外科医師のチームは、患者の嗅球の1つから採取・培養した神経細胞を脊髄に移植した。
研究に参加した科学者らは、損傷部分の上下に移植された細胞により損傷線維の再結合が可能となったと考えている。
「神経線維は、橋渡しをして繋ぐことで再び成長し機能が回復するという原則を打ち立てた」と英国の研究チームを率いたロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)神経学研究所(Institute of Neurology)のジェフ・レイズマン(Geoff Raisman)氏は述べている。
一方で、他の臨床試験結果を待つ必要があるとする科学者や、改善が移植により得られたことを証明できていないと主張する学者もいる。
治療を通じて再び歩くことができるようになったのは、ポーランド人男性のDarek Fidykaさん(40)。Fidykaさんは、体が不自由になってから2年間にわたって集中的に理学療法を受けたが、回復の兆しは一向に見られなかったという。
しかし移植手術から3か月後、左の腿に筋肉がつき始め、さらにその3か月後には、平行棒と脚の補助装置を利用して第一歩を踏み出すことができるようになった。今では歩行器で屋外での歩行もできるようになったという。
Fidykaさんは、「感覚がもどってくると、再び生き返ったような感じだ」とコメントしている。(c)AFP/James PHEBY