北朝鮮、拘束の米国人1人を解放
このニュースをシェア
【10月22日 AFP】北朝鮮が、拘束していた米国人3人のうちの1人、ジェフリー・ファウル(Jeffrey Fowle)氏(56)を解放した。北朝鮮は21日、米国防総省の航空機の着陸を許可するという異例の措置を取り、同機はファウル氏を乗せると直ちに米国に向けて飛び去った。
ファウル氏は今年4月に北朝鮮に入り、その後拘束されていた。健康状態は良好なもよう。ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)米大統領報道官は、ファウル氏は「北朝鮮からの出国が許可された」と発表し、すでに帰途についていることを明らかにした。
米当局者らによると、北朝鮮はファウル氏の出国を許可する時間枠を米国に通知。これを受けて国防総省は、米朝間に国交がないにもかかわらず、航空機を派遣して同氏を北朝鮮から出国させることを決めたとしている。
アーネスト報道官は、「北朝鮮によるファウル氏解放の決断を大いに歓迎する」と述べた。また米国務省のマリー・ハーフ(Marie Harf)副報道官は、ファウル氏の解放に尽力したとされるスウェーデンの外交官らに謝意を示した。
ハーフ副報道官は記者団に対し、ファウル氏は医師の診断を受け「健康状態は良好とみられる」と述べた。また、北朝鮮を出発した航空機は米領グアム(Guam)を経由し、その後米本土に向かうことも明らかにした。ただし、ファウル氏がいつオハイオ(Ohio)州の自宅に戻るのか、どのような経緯で同氏が解放されるに至ったかについては発表を差し控えるとした。
今月に入ってファウル氏は、解放に向けて動くよう米政府に改めて嘆願していた。在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)の中央機関紙、朝鮮新報(Chosun Sinbo)が掲載したインタビューで同氏は、先に裁判にかけられ収監されている米国人、ケネス・ベ(Kenneth Bae)氏(42)とマシュー・ミラー(Matthew Miller)氏(24)と同じ運命をたどりかねないことを強く「危惧している」と話していた。
ファウル氏は今年4月に北朝鮮に入り、北部の清津(Chongjin)のナイトクラブのトイレに聖書を残していったとして身柄を拘束されていた。
2012年11月に拘束された韓国系米国人のベ氏は15年の労働教化刑を、今年4月に北朝鮮への入国審査時にビザ(査証)を破り捨て、亡命を求めたとして拘束されたミラー氏は6年の労働教化刑を言い渡されている。
ハーフ副報道官は、ミラー氏とベ氏の解放についても「米政府は引き続き積極的な働き掛けを行っていく」という方針を示し、両氏の窮状について話し合うため、国務省のロバート・キング(Robert King)特使の北朝鮮派遣を提案していることを改めて明らかにした。
北朝鮮が米国人を拘束していることについて米政府は、外交上の譲歩を引き出す狙いで政治的な人質をとっていると北朝鮮を非難している。一方北朝鮮側は、キング特使への査証発給を繰り返し拒否。これは北朝鮮が、キング氏よりも高いレベルの特使の派遣を望んでいるためとみられている。(c)AFP/Jérôme CARTILLIER