【10月21日 AFP】無料の食事、4か月の産休、そして今度は卵子凍結――交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(Facebook)が新たに開始した従業員への福利厚生が、同社で働く女性たちの役割についての論争を巻き起こしている。

 IT業界で働く女性たちのための団体「WITI」の創設者、キャロリン・レイトン(Carolyn Leighton)氏は、「企業が従業員のためにやるべきことについての理解を広める余地はまだまだある」と語る。

 レイトン氏は、子どもを産む時期を延期することが可能となる卵子凍結に対し、企業が補助金を出すという施策を、「ばかげている」と一蹴。「私の電話は、憤慨した女性たちからの電話で鳴りっぱなしです。彼女たちは、これが男女間の賃金格差という問題から目をそらせようとするための案だと感じている」。レイトン氏によると、米国の女性には、同じ仕事をする男性の77%の給料しか支払われていないという。

 フェイスブックはシリコンバレー(Silicon Valley)の企業の中でも特に人事管理において革新的だとされるが、卵子の凍結に最大2万ドル(約215万円)を支給するという新施策の目的は、格差解消ではないようだ。

 米国には国民皆保険制度がないため、ほとんどの米国人は雇用先の保険に入る。フェイスブックで働く場合、福利厚生は不妊治療や同性愛者カップルの代理母利用、精子バンクへのアクセスなど幅広い。他にも、出勤している日は1日3食の無料の食事がつき、職場での医療や洗車までカバーされている。

 同社の広報は、「女性限定の福利厚生はない。フェイスブックの従業員のための福利厚生だ」と語り、出産前後の4か月の休暇は米国内の他企業に比べて寛大だと主張する。

 一方、アップル(Apple)も2015年1月から、卵子凍結に対し同様の補助金を支給する。同社は、従業員のパートナーや子どもに対する福利厚生を手厚くすることで、人生を生産的にするための手助けをしたいと表明している。

 遺伝学・社会センター(Center for Genetics and Society)のジェシカ・クッシンズ(Jessica Cussins)氏は米ニュースサイト「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」のコラムで、「つまり、『われわれはアップルで働く女性たちに、家庭などに邪魔されることなく、より長い期間をうちで働いてほしい』と言いたかったんでしょう」と指摘した。

 一方、ニューヨーク(New York)の産科医のチャビ・イブ・カーコウスキー(Chavi Eve Karkowsky)氏はオンライン誌「スレート(Slate)」で、女性が妊娠を先延ばしする背景には、経済的な安定や出会いの有無が大きく関わっていると指摘している。特に適切な時期にパートナーが見つかっていない場合は、卵子凍結を後押しする理由となるという。

 アメリカ進歩センター(Center for American ProgressCAP)によると、米国の女性の人口比は50.8%、労働人口においては47%を占めるが、幹部職についている女性の割合はわずか16.6%で、最も給与の高い部類の職においては8.1%のみだという。(c)AFP/Fabienne FAUR