米政府、イラク駐留兵の化学兵器被害を隠ぺいか 米紙報道
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【10月16日 AFP】米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は15日、2003年のイラク戦争開始後に現地に駐留した米軍が化学物質を搭載した約5000発の弾頭などを発見し、兵士らが有害物質にさらされていたにもかかわらず、米政府がその規模を隠ぺいしようとしていたと報じた。米機密文書と退役米兵の証言に基づいた情報だという。
イラク侵攻当時、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米元大統領は、イラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権が大量破壊兵器を保有していると主張し、開戦に踏み切った。
NYタイムズが「情報自由法(Freedom of Information Act)」の下で公開請求し入手した政府文書によると、米軍は実際に大量破壊兵器が使用されている証拠を見つけることはできなかったものの、経年劣化した化学兵器の弾頭や砲弾、爆弾など5000発を発見した。だが、米軍の兵士らはこうした化学兵器の取り扱いに関する訓練を受けておらず、必要な装備も持ち合わせていなかったという。この化学兵器に関する事実は米議会では一部しか報告されず、米兵はこの件について口外しないよう、あるいは虚偽の説明をするよう指示されたと、同紙は報じている。
2007年にマスタードガスで皮膚がただれたというある米陸軍軍曹は、緊急搬送も病院での治療も拒否されたとNYタイムズに話し、「負傷兵ではなく実験動物になったような気がした」と語っている。
この報道について米国防総省は、米軍がイラクで化学物質を発見したことは2006年にすでに公表したと反論。米兵らが負傷の程度を軽く見せたり、化学兵器発見の事実を隠したりするよう指示されたとの疑惑について、当局は認めていない。ただし、ジョン・カービー(John Kirby)国防総省報道官は、約20人の米兵が2004~11年に神経ガスやマスタードガスにさらされた事実を認識していると述べた。
NYタイムズによると、米軍が発見した化学兵器は全て1991年以前のイラン・イラク戦争中にフセイン政権下で製造されたもので、多くは米国で設計され、欧州で製造された後、欧米企業によってイラク国内に建設された化学工場で組み立てられたものだという。
米政府が情報を隠ぺいした結果、負傷した米兵らは適切な治療が受けられなかっただけでなく、名誉戦傷賞など負傷兵が得られる勲章や資格を得られなかったとNYタイムズは指摘している。(c)AFP