【10月15日 AFP】西アフリカで4000人以上の死者を出し拡大するエボラ出血熱は、最貧国の経済にも打撃を与えている。

 リベリアのエレン・サーリーフ(Ellen Sirleaf)大統領は9日、世界銀行(World Bank)の会合にビデオで参加し、「われわれの開発計画はエボラ出血熱の発生によって妨げられた」と述べた。また、先週にギニアと国境を接する東部を訪れた際には、「開発計画を再開するため、エボラ出血熱の撲滅に向けて共に闘おう」と国民に呼び掛けた。大統領は外国人労働者が退避して工事が中断しているイエケパ(Yekepap)-ガンタ(Ganta)間の幹線道路建設プロジェクトにも懸念を示している。

 リベリアの経済学者、サミュエル・ジャクソン(Samuel Jackson)氏は今後の展望について「経済活動は停滞もしくは停止する。工場の建設計画はなくなり、インフラ整備は遅れる」と悲観的だ。

 リベリアでは主要産業である天然ゴムと鉄鉱石が打撃を受け、輸入品の価格は急騰した。アフリカの大手銀行エコバンク(Ecobank)の研究部門責任者、エドワード・ジョージ(Edward George)氏はエボラ出血熱による影響についてAFPの取材で「さまざまな国やコモディティー(商品)市場を徐々に圧迫している。大規模な投資引き揚げが突然起きているわけではなく、経済活動全般が減速している」と説明した。

 例えば、米石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)は9月、2014年末に開始が予定されていたリベリア沖での海底油田探査を延期すると発表した。

■食料価格が急騰

 農業やサービス部門への影響はさらに深刻だ。ギニアの首都コナクリ(Conakry)でホテルを営むムサ・ソウさんは「客室利用率はほぼゼロだ」と話した。国連(UN)の食糧農業機関(Food and Agriculture OrganisationFAO)は、リベリアやシエラレオネでは農業と食料安全保障が危機的な状況にあると指摘している。

 食料生産を維持するため、シエラレオネの農業当局は隔離されていない地域の農家の人たちを復帰させる取り組みを行っている。農業当局者は「エボラ出血熱への恐れで遠のいていた農家の人たちが少しずつ戻ってきている」と、取り組みの成果について話す一方で、「労働者はまだ少ない。彼らは、汗だくになるほどの労働のため、他の労働者と接触すれば感染の可能性が高まるのを恐れている」と説明した。

 シエラレオネの人口の過半数が住む隔離地域の状況は一層、深刻だ。市場の運営者、ファトゥ・カマラさんは「エボラ出血熱が発生してから、生産者も客もここへ来るのを恐れている。以前なら商品の価格は安かったが、今は生産者が危険にさらされながら売りに来ているので、とても高い」と話した。

 FAOによれば、リベリアの首都モンロビア(Monrovia)では主食であるキャッサバの価格が1.5倍に上昇し、多くの家庭が収入の80%を食費に充てざるを得ない状況だ。

 こうした中、米コカ・コーラ(Coca-Cola)から数少ない明るいニュースが提供された。同社は来年3月からリベリアで、蒸留水の生産などを中心に事業を拡大するという。設備は10月中に到着し始める見込みだ。(c)AFP/Marc BASTIAN